高密度化進むデータセンターでも独自のアイデアでコスト削減を支援するラリタンの勘所

田中好伸 (編集部) 吉澤亨史

2013-08-12 15:00

 米Raritanは、電源タップ(PDU)などの電源管理、エネルギー管理、KVMスイッチなどの製品群をグローバルで提供している。電源管理では、限られたスペースで高密度化が進むデータセンターなどで、より高い電力を低コストで安定的に供給することを可能にしているという。今回は、同社のディレクターであるDavid Wood氏に同社の技術の特徴などを聞いた。

ラックあたり1000ドルのコスト削減を実現

 Raritan製品群のユーザー企業には「データスケールビジネス」と「One Hit Wonders」の2つのタイプがあるという。データスケールビジネスは、ビジネスとともにデータセンターも拡大していくタイプで、毎年のようにデータセンターが拡張していく。クラウドを基盤にしたビジネスを提供している企業が多く、Raritanと継続的な付き合いがある。eBayやTwitter、Linkedin、Bloomberg、Intuit、AOLなどが大手顧客だ。

 一方、One Hit Wondersは2~3年に一度、大規模なデータセンターを構築するタイプ。ひとつの案件が非常に大きく、そのタイミングでインフラを見直すケースも多いという。DisneyやAdobe、エネルギー大手のPacific Gas & Electoric Companyなどが大手顧客となっている。

 Wood氏はデータスケールビジネスの事例としてeBayを取り上げた。eBayでは、運用コストの削減と省電力化を目標に、米国内に散在していた約10のデータセンターを統合し、自社で管理しようというニーズがあったという。


David Wood氏

 「eBayの要求は、ラックの電源が20kWという非常に高密度。ラックの数も膨大なものになるため、それらをつなぐためのコストも莫大になる。そこでRaritanではPDUはもちろん、PDUやラックのコードにも着目した」(Wood氏)

 通常、PDUやラックには柔軟性の高いフレキシブルケーブルが使用される。しかし、ラックの場合は可動性を重視する必要がないため、これらをハードケーブルにした。PDUまでの電源ケーブルも、データセンターの建設業者と話し合って天井から直接電源を引き込む仕様とした。さらにタップボックスのコネクタやコード、PDUプラグも工夫して距離を短くした。これらの結果、ラックあたり1000ドルのコスト削減を実現したという。

 eBayではまた、55kWという高密度のPDUを使用したいという要望があり、Raritanでは、この要望に応えるために27kWの電源をひとつにまとめたPDUを開発した。「技術者がわかりやすいようにカラーのPDUも依頼され、Raritanは赤と青のPDUを製作した。これにより視認性を高くし、作業のミスをなくしている」とWood氏が説明した。

 RaritanのPDUは60度まで耐えられる信頼性の高さも評価されているが、さらに温度センサをラックの上中下に配置し、さらに暖気(ホット)側と冷気(コールド)側の双方に設置している。空気の流れを把握し、正しい冷却が行われているかどうかを常に確認できるようにしている。

 こうしたRaritanの温度センサをはじめとする情報を最大活用していることもeBayの特徴だ。eBayでは「Digital Service Efficiency(DSE)」というソフトウェアでのダッシュボードを開発し、パフォーマンス、収入、コスト、環境への影響の4つの状況をリアルタイムで確認できるようにしている。

 Raritanの1000台ものPDUのセンサ情報は7秒ごとに更新され、DSEに表示される。これによって、1取引あたりのコストをきめ細かく算出でき、電力コストと売り上げのバランスをリアルタイムにチェックできる。

 PDUにおいて、もうひとつ大きな要素になっているのがWi-Fiによるアクセスだ。Wi-Fi経由でPDUへのアクセスを可能にすることで、PDUへのIPの割り振りやラックへのLANケーブルの配線が不要になる。このネットワークのためのコストは、構成によって300~500ドルかかってしまうため、そのコストが不要になるのはコスト効率の面でも大きなメリットとなる。

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