仮想化を売り込もうとしている人たちは、90%の市場普及率を夢見ているが、現実には企業での仮想化技術の普及率はそれをはるかに下回る。サーバの仮想化は、1960年代半ばにIBMのメインフレーム「System/360 Model 67」上で仮想化の能力を提供したCP/CMSプロジェクトのCP-40で生まれたもので、もう誕生から50年近くも経っているにも関わらず、いまだに十分に普及しているとは言いがたい。
では、なぜ仮想化の普及にこれほど時間がかかっているのだろうか。
1. 期待外れの投資利益率(ROI)
これは、聞き間違いではない。仮想化のROIが問題だなどということを考えている人はいないだろう。データセンターのフロアからサーバを減らせば、必要な床面積も、消費電力も減るはずで、その利益は明らかなはずだ。そして、実際にその通りのことが起こっている。しかし問題は、その利益が十分かということだ。
最近行われた、800の組織を対象としたCAの調査によれば、回答組織の44%が、仮想化の取り組みが成功だったとは断言できないでいる。問題の中心は、仮想化されたマシンが最適なレベルで稼働しているのかを評価できるIT指標がないことだ。
2. 仮想環境であらゆるものが連携してうまく動作するという保証がない
サーバの仮想化は素晴らしいが、エンドツーエンドのアプリケーションとしては、ストレージとネットワークも必要となる。これらのほかの資源も仮想化しない限り、完全な仮想環境にはならないし、提供されているアプリケーションの性能のうち、どの程度が仮想化から得られる恩恵なのかを評価することは難しい。この見えにくさが、IT部門にとっては大きな欲求不満の種になっている。これが、仮想化のROIに算入されるのが主に床面積と電力消費の削減だけで、ほかの要素がほとんど考慮されない理由の1つになっている。
3. 仮想化の深いノウハウがない
仮想化ベンダーは仮想マシンのセットアップ、メンテナンス、チューニングといった要素にベストプラクティスを自動化して組み込んでいるが、実際に利用するアプリケーションや、アプリケーションが消費する資源の最終的な調整は、やはりIT部門の仕事だ。ITスタッフの多くは、アプリケーション(およびアプリケーション開発 )が専用の物理サーバで動いていた環境から来ているため、OSに仮想環境で本来必要なよりも大きなフットプリントを持たせるのに慣れてしまっている(仮想環境ではアプリケーションが資源を共有するため、フットプリントは小さくて済む)。残念ながら、ITスタッフは専用サーバの考え方を仮想環境にも持ち込む傾向があり、OSのサイズを本来必要とされるよりもずっと大きくしてしまったり、資源も必要とされるより多く消費したりしてしまいがちだ。