カスペルスキーとインターポールの連携に見るサイバー犯罪撲滅で必要なこと - (page 2)

大川淳

2013-12-03 07:30

 サイバー犯罪が“海を渡る”ことが常態化している中、これらのような犯罪を抑制するには。国際機関や各国の執行機関同士が協力しなけらばならない。

 中谷氏は「INTERPOLとしては、サイバーの脅威について、広報と啓発を継続していきたい。このような犯罪は、実際の銀行強盗などと異なり、反復される可能性が大きく、犯罪者はリモートで実行できるので捕まる可能性が小さいとみているのは問題だ。われわれは、さまざまな手段を考えており、INTERPOLとしてサイバー犯罪対策に注力していきたい」と語った。

 Kaspersky氏は、INTERPOLへの協力を決めた理由として「サイバー犯罪を撲滅するのがわれわれの仕事だ。世界を、サイバーの世界を救うことが使命だと考えている。最善の努力をしてサイバー犯罪をなくしていきたい。そのためには、INTERPOLのような機関との協力が非常に重要になる」とした。

日本は企業や個人の危機感が希薄--意識改革が必要

 サイバー犯罪に対する国内の現状について中谷氏は「国際的な傾向からみて国民的なレベルで、これらの犯罪にどれだけ注意しているか考えると、政府レベルでは力を入れているものの、企業や個人のレベルでは、いささか心もとないと感じる」という。

 「たとえば、被害を受けた企業が、社会的な評価が損なわれるのではないかとの懸念から事実を警察に報告しない例すらある。日本人は海外に出かけても、あまり用心深いとはいえないのではないか。インターネットでは、パスポートを持たずに国境を越えているようなものだとの意識を持つべき。危機意識はまだ低い。これまでは日本語という障壁に守られてきた面があるが、今やサイバー犯罪のプラットフォームがある」と中谷氏は説明。日本語のサイトであっても、サイバー攻撃をしやすくなってきていることへの危機感を強めるべきだとしている。

 Kaspersky氏も「さまざまな方法が現れてきており、日本語サイトへの攻撃はいくらでもできる。実際、日本語サイトを標的にする例が増えている。かつて、日本ではサイバー犯罪はそれほど深刻ではなかったが、今はそうではない。IGCIと協力し、サイバー空間をより安全にしていきたい。サイバー犯罪を技術的に分析し、そこから得られた知見をINTERPOLなどの提供し、ITセキュリティの専門家を育成していく」と応じ、協力関係をさらに強化する意向を示した。

 最後に中谷氏は「技術が進化し時代は大きく変わっている。(ITなどを含め)その変転を悪用している犯罪者たちがいる。われわれはそれらの動きを何とか止めようとしている。犯罪者を捕まえることは大事だが、広報や啓発、防犯の活動も重要だ。被害を受けてからでは遅い」と語った。

 Kaspersky氏は「もはや日本は世界とつながっていない国ではない。サイバー攻撃に対し決して安全とはいえない。マルウェア対策製品や多様なツールなどを使い、自分の身は自分で守ろうとの意識が重要になる。被害が出た例があったら、無関心にならず脅威の実態を知るべき」と述べた。


Kaspersky氏(左)と中谷氏

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