EMCジャパンのRSA事業本部が2月6日に公開した「Monthly AFCC NEWS」2月号(Vol.78)によると、オンライン型POS(販売時点情報管理)端末を狙った“大変効率のいい仕事をする”新型のトロイの木馬「ChewBacca」が発見されたという。
ChewBaccaは、2013年12月に米国有名小売店の決済ネットワークから4000万人分ものクレジットカード情報が漏洩した事件で使われた。キーロギングやプロセスメモリスキャンにWindowsのAPIを使っており、Windowsベースのオンライン型POS端末を狙ったものとみられている。
制御、指示を出す“コマンド&コントロールサーバ(C&Cサーバ)”への通信には「Tor(The Onion Router)」を活用するなどして通信を秘匿化している。その一方で、ChewBaccaは「仮想環境で動作しない」など最近の多くのマルウェアが持つ、外部からの解析を妨害する仕掛けをまったく儲けておらず、デバッグ情報も容易に取り出せたという。自己完結型であり、ほかに必要なモジュールのない単純な構造のため、ファイルを削除するだけで、端末から除去できるシンプルな作りとなっている。
これまでにもPOS端末を狙ったトロイの木馬は存在しており、2012年末には「Dexter」「vSkimmer」が注目を集めた。これらは地下市場で流通させる前提で開発された“商用モデル”であるのに対して、ChewBaccaは、こうした特徴から特定の犯罪組織が自らの犯行のために開発した“プライベートモデル”とみられるとしている。
ChewBaccaによるクレジットカード情報の摂取が初めて確認されたのは2013年10月25日。それから3カ月の間にロシアやカナダ、オーストラリアでも発見されている。解析防御などの不備など洗練性に欠けるところもあるが、ChewBaccaは、非常にシンプルであるにもかかわらず、大変効率のいい仕事をするトロイの木馬として、大いに注意をする必要があると警告している。