富士通は3月26日、独立行政法人理化学研究所放射光科学総合研究センターから受注した新スーパーコンピュータシステムの構築を完了したと発表した。システムは4月から稼働を開始する。
新システムの中核には、富士通のスーパーコンピュータ「FUJITSU Supercomputer PRIMEHPC FX10」が採用され、理論演算性能90.8TFLOPSを実現するという。PRIMEHPC FX10はスーパーコンピュータ「京(けい)」で利用するアプリケーションと互換性がある。
ナノ物質の構造や機能の解明のため、X線自由電子レーザー(XFEL)施設SACLAから得られる膨大な実験データを解析する際、京を使った詳細解析の前にターゲットの絞り込みなどの事前解析を行う。さらに、実験データの特性に合わせた解析ソフトウェアを開発するのがこのシステムの目的だ。
これにより、京におけるデータ解析が効率化され、ナノ物質の構造解析に要する時間を大幅に短縮でき、新材料開発やバイオ分野での産業応用など、研究成果創出の加速に貢献することが期待されている。
導入されたシステムの概要は以下の通り。
- 計算ノード PRIMEHPC FX10、4ラック、384計算ノード(384CPU)、主記憶総容量12TB、インターコネクト:Tofuインターコネクト(6次元メッシュ/トーラス)、理論演算性能90.8TFLOPS
- ログインノード/管理サーバ群 「PRIMERGY RX300 S8」11台
- 制御サーバ共有ディスク 「ETERNUS JX40」1台
- ローカルファイルシステム 「ETERNUS DX80 S2」13台、100TB
- グローバルファイルシステム 「ETERNUS DX80 S2」5台、500TB
「PRIMEHPC FX10」
同システムについて、理研放射光科学総合研究センター グループディレクター 矢橋牧名氏は、以下のコメントを寄せた。
「SACLAは供用開始後2年が経過し、さまざまな実験が順調に立ち上がってきました。高い加速器技術、光学技術によって構成され、世界で最も安定するXFELと評価されており、XFEL光の試料への命中率(ヒット率)も、当初の予想をはるかに上回っています。目下の最大の課題は、日々生み出される膨大なデータに対する迅速な解析の実現です。PRIMEHPC FX10の導入により、解析時間の劇的な短縮とともに、京とSACLAという2つの国家基幹技術の融合が進み、幅広い学術、産業におけるイノベーション創出につながることが期待されます」