CA Technologiesは4月24日、「ITの役割の変化とその対応」と題する調査の報告書を発表した。それによると、日本企業ではIT支出の約4分の1がIT部門以外の部門で発生しており、CAでは日本企業におけるITの役割は大きく変化しているとしている。
今回の調査は、米CA Technologiesの委託でVanson Bourne社が実施したもので、2013年5月から7月にかけて、アジア太平洋地域の6カ国(オーストラリア、中国、インド、日本、シンガポール、韓国)と世界のその他15カ国における1300人の上級IT意思決定者を対象に実施された。調査の回答者は、収益1億ドル以上の企業のIT部門幹部、プロジェクトリーダー、エンタープライズアーキテクトで、日本では75人が回答している。主な結果は以下の通り。
IT支出の1/4がIT部門外から
この数字は他のいくつかの国(例えばインドではIT支出の55%が、中国ではその49%がIT部門外で発生)よりはまだ低いものの、調査回答者はこの傾向が今後も上昇すると予想しており、今後3年以内に日本におけるIT支出の39%が他の事業部門によるものになると予測している。
IT予算が「ビジネスサービス」に割り当てられる傾向
これまで日本企業では、80%ものIT予算が「メンテナンス」に割り当てられてきた。現在では、新サービスの開発と展開に対する投資額は、アジア太平洋地域において最低となっている(地域平均の49%に対して44%)が、ITへの総事業支出は、「現状維持」またはメンテナンスなどの活動から、「新サービス提供」に強い焦点を当てる活動へと移行しつつある。今後は、主要なIT部門以外におけるアウトソーシングの導入が増加を続けることで、イノベーション分野へのIT支出の割合が増え、3年後には61%に変化することが予想される。
テクノロジは「全社規模のビジネスドライバ」という立ち位置に
IT部門の役割について「従来のまま変わらない」とする回答者は29%にとどまり、IT機能の一部を他の部門に移管(40%)、組織内のすべてのIT業務をアウトソース(21%)など、70%のIT担当者が、企業におけるIT部門の役割に大きな変化があると認識している。ただし、組織内で誰がITの責任を担うかに関しては合意が取れていないのが現状だ。テクノロジは「IT部門が集約管理するもの」という存在から「全社規模のビジネスドライバ」へとそのポジションが変わることによって、企業に変革がもたらされ、テクノロジの導入、展開、運用をする方法が改めて検討されている。
戦略パートナーなどビジネス面での役割
多くの日本のIT部門は、新規、革新的製品/サービスの開発者(15%)や新規事業の推進力(25%)といった役割を果たしていないことが明らかになった。しかし、3年後は、戦略ビジネスパートナー、業務アドバイザー(49%)、新規事業の推進力(43%)といった役割が大きく伸び、組織のインフラとアプリの維持管理(17%)、従業員への技術サポートの提供(24%)、問題発生時の対処(32%)といった役割が減少すると予想している。
事業部門にITの価値を理解させる努力が不十分
他のアジア太平洋地域諸国に比べ、日本は事業部門と主要業績評価指標(KPI)を共有する頻度が最も低かった。また、投資の変動がビジネスに与える影響を測定しているのはわずか23%で、ITがそのKPIを満たしているかどうかを理解しているのは31%に過ぎない。日本のITリーダーは、ITがビジネスにもたらす効果を定量化しておらず、事業部門にITの価値を理解させるための努力が不十分といえる。
人々が予想するITの将来
報告書では、今後の日本におけるITリーダーの役割として、IT部門に起こりつつある変化を理解し、ビジネスに対してITだからこそ提供できる価値を知り、ITの役割を進化させ、ITとの関連性を高めるために必要となる具体的な指針を定める必要があると結論づけている。