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三国大洋のスクラップブック

「アップルがディズニーを買う日」は来るのか(前編)

三国大洋

2014-05-26 08:00

 前編と後編の2回に分けて、ここにきて非常に混沌としてきた印象の強い米国のメディア業界と放送・通信業界の話を記す。普段はあまり接点のない会社の名前が並んでいても面白い話にならないことは容易に想像がつくので、やや無理して「Apple」を差し込んでみた、という自覚もある。

 その一方で、新しいかたちの垂直統合(無論、「単純な囲い込み」とは異なる)が進み始めていることもまた事実。ハードウェア、ウェブサービス、テレビ局/映画会社、放送・通信事業者といった従来の業種・業界の線引き、あるいは有線(固定回線)やケーブルテレビ(CATV)回線と無線(携帯通信)といった線引きがどんどん意味を失う中で映像配信の分野を主戦場として、かなり規模の大きな“椅子取りゲーム”が始まっている、そのことの感触が少しでも伝わればと思う。

Appleの「テレビの話」はどうなったのか

 「Steve Jobs公認伝記」の作者として知られるWalter Isaacson(元CNN会長)が、先日から噂が流れている「AppleのBeats買収話」に触れて、「Jimmy Iovine(Beatsの共同創業者)は、Appleに入ってコンテンツ関連事業の責任者になるんじゃないか」と予想していたらしい。今回は、それで思い出したことを少し書く。

 Billboard記事(5月19日付)に出てくるIsaacsonの話は、一言で言うと“当て推量”の域を出ないものに思える。それでも「2002~2003年あたりにIovineがJobsにUniversalの買収話を持ちかけていた」といった、あまり聞いたことのないエピソードなどもあって興味深い(IsaacsonがJobsの取材ノートを引っ張り出してきて話したらしい)。

 Interscope Geffen A&Mレーベルの会長であるIovineが、iTunes Music Storeの立ち上げに際して、大手音楽会社(「ハリウッド」と総称されることも多いが、ここでは音楽業界の各社)との橋渡し役として大いに貢献した、といった話はすでにいろんなところで書かれているが、この音楽レーベルの親会社にあたるのがUniversal Music Group。

 2002~2003年といえば、Vivendi Universalが大赤字を出して資産(メディア事業)の切り売りをしていた頃だから、Iovineとしては「今なら安く買い叩ける」とみていたのかもしれない。無論、自分の会社をAppleに引き取ってもらって、「経営基盤を安定させたい。Vivendiの影響を受けないところに逃げ込みたい」と考えていた可能性も高そうだが。

 この頃、VivendiからUniversal(映画会社の方)を引き取ったのがGeneral Electric(GE)傘下の大手テレビ局NBC。そしてこのNBCUniversalを後に手に入れたのが、今Time Warner Cable(TWC)の買収話で大いに注目を浴び、最近ではこの件で議会公聴会も開かれていたCATV最大手のComcast。今回初めて気付いたが、Dish NetworkのCharles Ergenが立ち上げた放送衛星の会社EchoStarにもVivendiは一時資金を入れていたらしい。

 Isaacsonの「Steve Jobsが生前、『テレビ分野進出の手がかりをつかんだ(“I finally cracked it.”)』と口にしていた」云々とする話が大きな注目を集めていたのが2011年10月のこと。そして、あれからもう2年半くらい経つのに、この分野で確たる進捗が見られないのは周知の通りだが、その間にあった他社の動きと比べれてみれば、既存の「Apple TV」でみられるテレビチャネルの数が増えたことなどは物の数にも入らない。そして、あまりに動きがないせいか、最近では「Jobsはもともと製品(ハードウェア)など作る気がなかったのでは?」といった話さえ見かけるようにもなっている。

 ただ、数百人規模の別動部隊まで組織してチャレンジしながら結局うまくいかなかったIntelの例からも察せられるとおり、ウェブ経由の有料テレビ放送(映像配信)サービス――よく「Over The Top(OTT)」などともいわれるもの――を新たにやるというのは、相当ハードルの高いことでもある。Intelは2013年、別動部隊のIntel Media(「OnCue」というサービス名まで決まっていた)をVerizon Communicationsに売却してしまったし、2014年初めに同様のサービス開始を口にしていたSonyについても、いまだに具体的な話は見かけない。

 OTTのテレビ放送(映像配信サービス)をやる上で「ハリウッド」(大手メディア企業各社)との交渉――映像コンテンツ確保に関わるライセンス交渉は避けて通れないが、その点で業界に顔が利くとされるJimmy Iovineの力を借りようとAppleのTim Cookが考えているとするIsaacsonの推測は興味深い。

 同時に、ハリウッド各社に対して大きな影響力を持つCATV事業者や衛星テレビ事業者、それにAT&TやVerizonのような電話会社(映像コンテンツのディストリビューター)とうまく折り合いをつけられるような何らかの秘策がIovineにあるのかどうかも大いに興味を惹くところで、Appleが単なるセットトップボックス(STB)納入業者の立場に甘んじることはほぼ考えられないとすれば、やはりディストリビューターに対してレバレッジとして使えそうな何らかの材料を用意する必要があるようにも思われる(Appleがそれなりに旨味のある事業モデルを作ろうとした場合)。

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