ビジネストランザクションを可視化--APMソフトのAppDynamics、日本法人を設立

齋藤公二 (インサイト)

2014-05-28 17:56

 ビジネスとシステムが直結していると言われている。だが、システム全体の性能の低さがどれだけビジネスに悪影響を与えているのか、把握できているだろうか――。

 アプリケーション性能管理(APM)ソフトウェア「AppDynamics Pro」を展開する米AppDynamicsは5月23日、日本法人アップダイナミクス ジャパンを設立したと発表した。AppDynamicsの創業者兼最高経営責任者(CEO)のJyoti Bansal(ジョティ・バンサル)氏が来日し、国内展開などを説明した。

Jyoti Bansal氏
AppDynamics 創業者兼CEO Jyoti Bansal氏
中川寛氏
アップダイナミクス ジャパン 代表 中川寛氏

 AppDynamicsは、Wily Technology(CAが買収)のチーフアーキテクトだったBansal氏が2008年に設立した企業。APMソフトのAppDynamics Proを展開し、グローバルで1200社以上の顧客がいるという。2013年の受注数は前年比175%で、顧客ロイヤリティを図る指標NPS(Net Promoter Score)は85と高評価だという。米国のほか、イギリスやフランス、ドイツ、シンガポール、インド、オーストラリアに拠点を持つ。現地法人としては、イギリス、オーストラリアに次いで3番めになる。

 日本では、2012年から展開しており、すでに50社以上の顧客がいると説明。販売パートナーは新日鉄住金ソリューションズ、丸紅情報システムズ、エッジスクウェア、バーチャルコミュニケーションズの4社。今後3年間で、販売パートナーを10社まで増やし、日本での導入企業数を240社まで拡大する計画だという。

 Bansal氏は、同社製品が求められる背景として、アプリケーションアーキテクチャの世代交代が進行していると指摘し、製品の特徴を次のように説明した。

 「アプリケーションのアーキテクチャは、メインフレーム、クライアント/サーバ(C/S)、単一システムへと進化し、現在は、クラウドを中心とした並列分散環境となった。この第4世代のアーキテクチャは、サーバやシステム基盤ではなく、トランザクションが主体になる。このため、従来のようなITオペレーションは通用しなくなり、アプリケーション環境を可視化し、トランザクションをビジネスレベルで把握する必要がある。AppDynamicsはそこにフォーカスして開発した製品だ」

 Bansal氏の言うトランザクションとは、アプリケーションのトランザクションだけではなく、ビジネスに紐付く形で可視化することを指している。たとえば、チケットを販売するECサイトがあったとする。そのシステムを構成する、それぞれのサーバにAppDynamicsのエージェントをインストールすると、サーバ間のトランザクションをビジネストランザクションとして表示する。

 具体的には、ビジネストランザクションの一覧として、自動的に「ホームページ」「カタログ閲覧」「ログイン」「カートに追加」「ログアウト」「チェックアウト」「カートから削除」などが表示され、ユーザーがどこで離脱するか、どこでとどまっているか、パフォーマンスボトルネックになっているアプリケーションは何かなどを把握できるようになる。

 「トランザクションの追跡を可能にしているのは、“コンテキストタグ”とよばれるバイトコードに付与されるタグ。それらをトレースすることでビジネスコンテキストを可視化する。エージェントは非常に小さくシステムへの負荷は2%程度。ほとんどの企業は一定のテスト後に本番環境にインストールし運用している。これらは、Application Intelligence Platformというプラットフォーム上で実現している」(同氏)

 Bansal氏は、AppDynamicsがこれまで何を実現してきたかについて、実際の顧客の要望をもとに紹介した。たとえば、映画チケット販売のFandangoからは「過去24時間でチェックアウトが処理完了できなかったために失った売上合計金額を知りたい」、チケット販売のStubHubからは「昨日午後のアプリケーション障害で影響を受けたモバイルユーザーの数を知りたい」、航空券販売のOrbitzからは「5分間の売り上げが1000ドル以下になったときは、アプリのどこかに問題がある。どうしたら根本原因を発見できるか」などだ。

 根本原因の発見という点では、AppDynamics上でボトルネックを見つけ、それをドリルダウンしていくことで、たとえば、Oracle Databaseに対して発行されたSelect文が原因といったレベルまで追跡することが可能になっている。

 国内の販売体制については、代表の中川寛氏が説明した。100%パートナービジネスで直販は行わないこと、各エリアやマーケットごとにパートナー各社と協業することが基本方針という。エリアとしては関東、関西のほか、中部に力を入れていくという。サポートについては、パートナー各社から1次サポートがあり、さらに、米国、英国、インドでのグローバルサポート体制を敷く。


AppDynamics Pro画面。インストールされたエージェントがトランザクションの流れを自動的に可視化する

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