HPのソフトウェア部門SVPのHans-Peter Klaey氏にインタビューしました(グループインタビューだったので同氏の話を再構成する形で記事化しています)。
一般的にはHPというとサーバ/ストレージの会社、あるいは、パソコンの会社(人によってはプリンタの会社)というイメージがあると思いますが、実はソフトウェア事業で見ても収益ベースで世界3位の企業です(1位はIBM、2位はMS、Oracleは4位です)。伝統のOpenViewに加えて、Mercury、Pregrine、Opsware、Vertica、Autonomy等々M&Aで獲得したソフトウェア製品の資産も相当にあります。(OLTP系の)DBMSやWebアプリケーションサーバ系はパートナーに任せて管理系の製品にフォーカスすることが基本的戦略です。
今回のお話の中心は同社が昨年に発表したITPS(IT Perfomance Suite)についてです。ここでいう「パフォーマンス」とはシステムの性能の話ではありません。業務上の定量的指標を指します。つまり、KPIという言葉で使われる時の「パフォーマンス」です(日本語だと「業績」と訳されることがありますが、それよりもずっと広い概念です)。
「営業、マーケティング、生産等の部門にはパフォーマンス管理システムが提供されてきたが、IT部門に対しては同等のものは存在しなかった。その穴を埋めるのがITPSだ」とKlaey氏は述べます。
ビジネス系のパフォーマンス管理システムでは、売上、利益等々の財務的指標に加えて、たとえば、顧客満足度アンケート結果、在庫切れ件数、従業員の研修出席率等々、定量化できるビジネス関連指標をダッシュボード等のUIで一覧できるようにすることがポイントですが、ITPSも基本は同じです。ただ、扱う指標がIT部門特有のものになります。たとえば、サービスの可用性、開発プロジェクトの進捗、ヘルプデスクの回答時間等々がKPIの候補となるでしょう。HPではベストプラクティスのKPI群をプリセットして提供しています。
画面イメージも従来の企業パフォーマンス管理システムによく似ており、KPIをダッシュボードで一覧表示し、目標達成度をメーター、グラフ、色で表せるようになっています。もちろん、詳細情報にドリルダウンすることもできます。
「ITバランスト・スコア・カードのような概念は以前からあったと思うのですが?」の質問に対しては「概念としては古くからあったが実現できたのは我々が最初だ」とKlaey氏は述べました。また、当然ながら、HPのIT部門もITPSを活用しているそうです。
また、一般にスコアリング系のアプリケーションを導入する際に最大の障害となることが多い重要ポイント「自分のミスがあからさまになることを恐れるミッドマネージャーが抵抗勢力になることはないのか?」を質問してみましたが、残念ながら「CIOはこのシステムを大変気に入ってくれている」とあまり明確な回答を得られませんでした。問題はCIOではなく中間管理職だと思います。トップダウンで企業文化の改革も行いつつ導入することが必要であるということなのでしょう。
ITPSの話とは別にHPのソフトウェア戦略全般の話もありました。「ツールレベルでの議論は我々のフォーカスではありません。フォーカスはアプリケーションライフサイクルです」とのことです。また、クラウドに関しては「HPはクラウドとはオートメーション(運用自動化)と同義と考えています。オートメーションに対応せずにクラウドを採用しても得られるものはあまりありません。また、パブリックとプライベートの区別なくサービスを活用できるハイブリッドクラウドこそが目指す方向性です」と述べました。マイクロソフトのSoftware+Service戦略もそうですが、ほとんどの企業にとってはハイブリッドクラウドが中心になるというのは正しいと思います。
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ZDNet Japan編集部:本稿はブログ「栗原潔のIT弁理士日記」からの転載です。執筆者の栗原潔氏は、株式会社テックバイザージェイピー代表で弁理士。IT分野に特化した知財コンサルティングを提供しています。