現在、米中はサイバー空間を巡る闘いを繰り広げている。以前から、両国のこの闘いは「すでに現実のものとして進んでいるのではないか」と見られていたが、これを白日の下にさらしたのが米セキュリティ企業のMandiantの「ATP1レポート」だ。
同レポートは、中国人民解放軍の第61398部隊がサイバー攻撃を仕掛け、同部隊が入居するビルも明らかにしたことで、一躍注目を浴びるようになった。このMandiantを米FireEyeは1月に買収。日本市場でも、Mandiantの技術を生かした製品やサービスを提供する。
ファイア・アイは5月27日、セキュリティ上の脅威に対してアラートを発信、インシデントに対応、復旧などを単一のパッケージとして提供する「FireEye Security Platform」を発表した。10~12月中の提供を予定している。
![茂木正之氏](/storage/2014/05/29/ee4e163c5b9a66ba4de74ef73c0bb282/140527_fireeye_1.jpg)
ファイア・アイ カントリーマネージャー 茂木正之氏
![Dave Merkel氏](/storage/2014/05/29/98dcb3214136c0179dc060d9cac7ae4b/140527_fireeye_2.jpg)
FireEye CTO Dave Merkel氏
日本法人カントリーマネージャーである茂木正之氏は、企業のセキュリティ対策では人材不足が問題になっており、その解決には自動化とインテリジェンスが必要であると指摘、しかもコストを抑えながら実現することが急務であるとした。
ファイア・アイは、仮想化環境をベースにしたサンドボックス技術で標的型攻撃に代表される複雑化、高度化する脅威の見える化までを提供してきたが、インテリジェンスに長けたMandiantの技術をアプライアンス「FireEye HX」シリーズとして加えることで、脅威を検知した後の隔離、解決までを包括して提供できると述べた。これにより運用の自動化、精度の向上、コスト削減、世界規模への対応を実現するという。
Mandiantの最高技術責任者(CTO)で現在はFireEyeのCTOを務めているDave Merkel氏は、Mandiantは重大なセキュリティインシデント対応の専門家組織であり、Fortune 500企業33%を含む顧客に対して総合的なセキュリティコンサルティングサービスを提供しているという。「APT1レポート」の公開後、2つのAPT攻撃グループが作戦を中止し、その拠点を変更した。
しかし、依然として企業が脅威を検出するまでに平均229日かかっており、そのうちの67%が外部からの指摘で発覚しているという。攻撃を受けた企業の100%がマルウェアの定義ファイルを常に最新の状態にしていた。
最近の標的型攻撃は、特定の標的が「何を」から「誰を」になり、攻撃者はプロで組織化されており資金も潤沢、そして一度は撃退しても再び攻撃してくるという特徴があり、もはや従来型の多層防御は機能しないとMerkel氏は指摘した。攻撃の全体像を理解せずに対処を試みると、攻撃者に有用な情報を与える有害無益な結果になるケースもあるという。
![岩間優仁氏](/storage/2014/05/29/b591acef33feb61f8c66b9b1b4a18e28/140527_fireeye_3.jpg)
ファイア・アイ セールス・エンジニアリング シニア・ディレクター 岩間優仁氏
![坂根康之氏](/storage/2014/05/29/600625c5e0b4225f6545cba1d545b408/140527_fireeye_4.jpg)
ファイア・アイ セールス・エンジニアリング システムズ・エンジニア 坂根康之氏
ファイア・アイのセールス・エンジニアリングでシニア・ディレクターを務める岩間優仁氏によると、Mandiantは、セキュリティインシデント対応管理プラットフォーム、専門性の高いインシデント対応とコンサルティングサービス、インシデントの現場から得た、高度な攻撃者が使用するツールや技術、手法についての豊富な知識と情報が強みであるとした。
HXシリーズは、Security Platformの中でクライアントやサーバなどのエンドポイントでの脅威を防御するという位置付けだ。HXシリーズの特長として岩間氏は「高度な攻撃と持続的標的型攻撃(APT)の調査、捜索を可能にする」「ネットワークとエンドポイントの統合、一本化した対応を可能にする」「疑わしいインシデントの調査、判定時間を短縮する」「フォレンジックなしでインシデントの発生要因を認知できる」「エンドポイントの隔離を実施する」を挙げた。
セールス・エンジニアでシステムズ・エンジニアを務める坂根康之氏がHXシリーズを実演して見せた。同製品は、基本的にセキュリティ監視センター(SOC)でのリアルタイムフォレンジックのために設計されたもので、APTをはじめさまざまな攻撃の特徴をまとめた「インジケータ」で攻撃を検出する。さまざまなインジケータが用意されており、利用者が自由に組み合わせて活用できるという。
標的型攻撃の特徴でもあるファイルの偽装やシステムの改変などの検知も可能にしており、管理画面であるダッシュボードからリモートにあるエンドポイントの管理や隔離も可能だ。これにより人手やコストを最小化して検知後の対応から復旧までのセキュリティ対策を実現できるとした。