アジアのIT

マレーシア航空機撃墜事件後にトップブランドはどうつまずいたか

Enterprise Innovation日本版 Paul Mah

2014-08-05 11:00

 悲劇的な事件を利用してもうけようとするブランドは昔から批判されてきたにもかかわらず、ウクライナとロシアの国境付近でマレーシア航空MH17便が撃墜された事件(死者298人)を巡り、配慮に欠けた広告を掲載したとして、少なくとも1社が謝罪する事態となった。

 オーストラリアの保険会社Lisa Groupは、Googleアドワーズで「マレーシア航空」というキーワードを購入し、「マレーシア航空MH17便の悲劇は、生命保険見直しのサインだろうか?」と銘打った広告を出稿していたようだ。「マレーシア航空」というキーワードを購入したということは、撃墜事件に関連する検索結果とともにLisa Groupの広告が表示されるということだ。

 Lisa Groupの取締役Warren Lazarus氏は、『シドニー・モーニング・ヘラルド』紙に、同社は検索エンジンとウェブサイトに関するマーケティング業務を海外のパートナーに委託していると語った。Lazarus氏によると、この広告が表示されていたのは、内容についての電話が入り始める前の「約15分間」だけで、掲載をすぐに取りやめたという。

 「事態を知ってすぐに、広告を削除するよう指示しました。不快感を与え得る情報を発信してしまったことをおわび申し上げます」(Lazarus氏)

 最近の出来事や最新のニュースに関連した広告を出して成功を収めるにはコツが要るのかもしれない。成功すれば、ブランドにとって必要な大きな活力源を、比較的低コストでもたらすことができる。つい最近閉幕したサッカーのW杯がその一例だ。

 シンガポールのPRコミュニケーション・エージェンシーIN.FOMの共同設立者Mike Liew氏は、先日次のように話した。

 「開催中のイベントに連動した広告を出すのと同様に、ソーシャルメディアを使ってタイムリーで独創的な広報活動を行なえば、企業イメージを変え、存在感を高め、オーディエンスとともにより強いブランドエクイティを作ることは可能でしょう」

 良識があれば、大半の企業は自社を売り込むために悲劇的な事件を利用することはないだろうが、マーケティング活動と関係のないコミュニケーションでさえも、方法を誤ればネガティブな結果を引き起こすことがある。シンガポール航空が遺憾ながら思い知ることになった教訓だ。

 顧客から大量に寄せられた、搭乗予定の便の飛行ルートに関する問い合わせに答え、シンガポール航空は自社のTwitterとFacebookページに次のように投稿した。「シンガポール航空がウクライナ領空を飛行ルートとして使用しないことを確かめたがるかもしれない」

Singapore Airlines公式Facebookページから。批判が集中した後、犠牲者や遺族への配慮を表明する文言をコメント欄に追加した
Singapore Airlines公式Facebookページから。批判が集中した後、犠牲者や遺族への配慮を表明する文言をコメント欄に追加した

 この投稿は瞬く間にインターネットユーザーの非難を浴び、シンガポール航空は墜落事件を売名行為に利用しているように見える、そのうえ犠牲者の家族に弔意を表してもいない、と批判された。そして想像通りこの一件でシンガポール航空は謝罪に追い込まれた。

 「弊社が金曜朝にFacebookおよびTwitterに投稿した内容は、配慮に欠けているという印象を与えかねないものであったと理解しております」と、シンガポール航空は今週、自社のFacebookアカウントで書き込んだ。「先日の投稿は、弊社の便をご利用予定のお客様からいただいた、飛行ルートに関する情報を求める多くの声にお答えしたものでした」

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