HANAはパートナーを巻き込んだプラットフォームへ--SAPの狙いとは

吉澤亨史 山田竜司 (編集部) 2014年08月15日 07時30分

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 2013年から、統合基幹業務システム(ERP)パッケージからクラウドへと大きく軸足を移したSAP。クラウドベースでインメモリデータベース「SAP HANA」を提供する“Powered by HANA”があらゆる企業のIT基盤になることを目指し、新たなパートナーエコシステムも発表した。今回は、SAPで世界的なパートナー施策を統括する“グローバルパートナーオペレーションズ(GPO)”であるRodolpho Cardenuto氏に、同社の戦略や今後の展開などについて話を聞いた。


独SAP Global Partner Operations(GPO)Rodolpho Cardenuto氏

--GPOはどのような立場なのか。

 文字通りにグローバルでパートナーへのサポートを統括しています。私はSAPで6年のキャリアがありますが、これまで北米、南米などアメリカ大陸全体を担当していました。そして2カ月ほど前、Bill McDermottとJim Snabeの共同CEO(最高経営責任者)体制から、McDermottが単独でCEOを務める形に変わった際に、GPOを担当するようにと言われました。

 これまで6つに分けていた管理地域を1つに統合し、SAP Business OneやOEMビジネス、そして世界中の戦略的なパートナーシップ全体を管理しています。

 GPO就任の際にCEOから言われたことは、SAPがPowered by HANAのクラウドカンパニーを目指しており、市場でもクラウド分野のリーディングカンパニーになりたいと考えているということでした。

 SAPはそのために、カスタマーのオペレーションに対するサポートを提供すること、HANAとクラウドのプラットフォームを構築することに注力しています。

--SAPは大手ベンダーから新興企業までを対象にパートナーエコシステムを構築すると発表した。その意図は何か。

 現在の市場を図式化すると、リーディングカンパニー、中堅、中小企業(General Business:GB)のヒエラルキーになり、さらに全体を2つに分割するとオンプレミスとクラウドに分けることができます。SAPはパートナーエコシステムを構築することで、このポートフォリオ全体をケアできます。ERP、オンプレミス、クラウド、LoB(Line of Business、企業の業務で主要な役割を果たす業務アプリケーション)のそれぞれに対応する解決策を提供しています。

 顧客はこれまで5~6社の事業者を検討する必要がありましたが、SAPはパートナーの製品やサービスを含めて包括的に提供できます。これは他社にはできないことです。特に、業種別のコンポーネントがそろっていることは大きな強みです。

--Oracleも戦略が変わり、注力分野がSAPに似てきている。

 Oracleは昔からデータベースを提供していますが、そこから包括的なアプリケーションビジネスへと戦略を転換しています。ただし、Oracleのデータベースは基本的に35年前のデータセンターストアベースの技術を使っています。一方、HANAは4年前にSAPがローンチした新しいカテゴリのテクノロジです。

 (テクノロジの面では)従来型はオンライントランザクション処理(OLTP)の上にアプリケーションを走らせ、アナリティクスは別に持つという構成であり複雑でしたが、HANAは4年前の時点ですでに、(同一の基盤で)OLTPとアナリティクスが入ったシンプルなプラットフォームとなっており、その上であらゆるアプリケーションを走らせることができます。

 基盤を1つにすることによる大きなメリットの1つは速度です。インメモリ技術を使いこなすことで、ビッグデータを高速に処理できるようになりました。HANAがあらゆる企業のIT基盤になるという発想です。

 他社のインメモリデータベースは従来の進化形であり、ディスクをインメモリに置き換えただけだと私は認識しています。

 われわれは、インメモリ技術の利点の提供方法とパートナーエコシステムに手を入れました。例えばSaaS型でPowered by HANAというプラットフォームを提供することで、顧客は必要なアプリケーションを必要なときにだけ使用できます。さらに、こういった提供形態を取ることで、パートナーとの組み方も増えます

 競合企業の多くは、レガシーデータベースを基本にアドオン、アクセラレータを提供するのみです。一方、HANAは4年分先行していることで、インメモリデータベースを中心に、ITアーキテクト、パートナー戦略、SaaS型でインメモリデータベースを基盤としたアプリケーションを利用できるなど、充実したプラットフォームを実現しています。

 これにより、顧客が求めていたイノベーションを提供できるようになりました。競業企業が開始した、従来型のデータベースを高速化するソフトウェアと、われわれが求めているものとは観点が全く違います。SAPが「ERPカンパニー」から「ERPを包含したクラウドカンパニー」へと大きく変わろうとしている例でもあります。

 米OracleのLarry Ellison氏は、3~4年前にはインメモリに注目しないと言っていました。それが新しい戦略になったということは、彼も、インメモリデータベースを重要視するようビジョンを変えたのだと認識しています。ただし、注力分野や製品が重なろうとも、OracleやIBM、Microsoftとのパートナーシップは今後も変わらないと考えています。


Enterprise IT の統合基盤としての SAP HANA Platform

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