ミュンヘン市議会は、膨大な数の職員を抱える組織でも「Windows」を捨ててLinuxと無料ソフトウェアに移行できることを世界に示した。
このプロジェクトが2013年末に終了したとき、ミュンヘン市議会の約1万5000人の職員は、カスタムバージョンの「Ubuntu」である「Limux」と、「OpenOffice」への移行を完了していた。
しかし、同市議会がオープンソースへの移行をやめて、Microsoftに回帰しようとしているというのは本当だろうか。
そうした内容の報道が出たが、同市議会は否定した。ミュンヘン市議会の広報担当者であるStefan Hauf氏によると、Linuxから撤退する決定を下したとの報道は事実と異なるという。
Hauf氏は、先ごろ選出されたミュンヘン市議会のDieter Reiter市長が、同市議会の将来のITシステムに関する調査報告を依頼しただけだと述べた。
「新市長は管理部門に事実の収集を依頼した。今後の方針を決定し、市議会に提案を行えるようにするためだ」(Hauf氏)
「Limuxに限らず、IT関係のすべてが対象だ。組織、コスト、パフォーマンス、使いやすさ、ユーザーの満足度など、あらゆることが対象になっている」(Hauf氏)
調査は同市議会内部のITスタッフが現在実施しており、この基準に最も合致するOSとソフトウェアパッケージ(プロプライエタリとオープンソースの両方)を検討する。報道とは異なり、Limuxを捨ててWindowsに戻るべきかどうかという問題だけが調査の中心ではないとHauf氏は述べた。
同氏によれば、ミュンヘン市議会においてLimuxと無料ソフトウェアの今後に関する決定はまだ下されておらず、調査の完了まで決定が下されることはないという。
Hauf氏は「まだ何も決まっていない。決定は報告書に目を通してからだ」と述べ、調査はLimuxに対する不満がきっかけではなく、Limux移行プロジェクト完了後の方針に関する調査の一環だ、と付け加えた。
議会職員のLimuxと無料ソフトウェアに対する不満の度合いは至って普通であり、OpenOfficeで使われるodtファイル形式と外部の組織が使用するソフトウェアに互換性がないことが主な不満であるとHauf氏は言う。ミュンヘン市は、議会のすべてのOpenOfficeユーザーを「LibreOffice」に移行させ、「Microsoft Office」スイートとの相互運用性を改善するLibreOfficeへのアップデートに資金を出すことで、こうした問題をある程度緩和したいと考えていた。
同市議会のITに関する調査の完了予定日は設定されていない。Hauf氏は「まだ始まったばかりだ」としている。
Limuxへの移行は、2000年代初頭の同様の調査がきっかけとなって始まった。その調査では、「Windows NT」から「Windows XP」と最新バージョンのMicrosoft Officeに移行する利点と、GNU/Linux OSやOpenOfficeなどの無料ソフトウェアの利点が比較された。
ミュンヘン市の意思決定機関は無料ソフトウェアの方が優れた選択肢だと判断した。主な理由は、大手プロプライエタリソフトウェアベンダーへの依存から脱却し、オープンなプロトコル、インターフェース、データ形式を利用できるようになるというものだ。
Limuxプロジェクトの導入段階を主導したPeter Hofmann氏は2013年、米TechRepublicに対し、囲い込みからのさらなる脱却を求めるこうした声が同プロジェクトの推進力だったと述べた。
「それは決してミュンヘン市の最大の目標ではなかった。最大の目標は、依存から抜け出すことだった」(Hofmann氏)
ミュンヘン市のITの今後に関する最終決定は、選出された議員たちによって下される。同市議会の大半がLimuxプロジェクトを支持していると報じられているが、オープンソースソフトウェアは「プロプライエタリなITベンダーのソリューションに後れを取っている」とのReiter市長の発言が先ごろ引用された。同市議会の副市長であるJosef Schmid氏も、市議会の電子メールやカレンダーの予定に自分のスマートフォンからアクセスするのに時間がかかると不満を述べている。
ミュンヘン市議会は以前、Limuxへの移行によって1000万ユーロ以上を節約し、Microsoftへのライセンスコストの支払いを回避できたほか、PCの使用年数の延長を実現できたと述べていた。ミュンヘン市は2013年8月、LiMuxとOpenOfficeへの移行に2300万ユーロの費用がかかったことを明らかにした。ミュンヘン市は、「Windows 7」と新バージョンのMicrosoft Officeにアップグレードしていた場合のコストを3400万ユーロと見積もっており、LiMuxとOpenOfficeの方がはるかに安いとしている。
Microsoftは2013年前半に委託した調査で、こうした試算に反論した。その調査によれば、LiMuxプロジェクトのコストが6000万ユーロを超えることが分かったという。一方、「Windows XP」とOfficeのソリューションを採用していた場合のコストは1700万ユーロだったとしている。市職員は、その報告書は「誤った仮定」に基づいていると述べた。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。