SAPジャパンは9月18日、7月28日付で代表取締役社長に就任した福田譲氏の就任記者会見を開催した。福田氏の直属の上司は、アジア太平洋と日本を担当するプレジデントのAdaire Fox-Martin氏。1975年1月生まれの39歳と、エンタープライズソフトウェア企業の社長という意味では非常に若い。SAPジャパンに新卒入社し、さまざまな部門で営業部長を務めてきた。
7月28日付でSAPの代表取締役社長に就任した福田譲氏
福田氏は抱負として「変革を志すすべての人のパートナーであり続ける」「会社を変えることで社会も変える」ことを挙げた。それを実現するためのキーワードを「グローバリゼーション」「トランスフォーメーション」「イノベーション」と定めた。
具体的な施策として中心になるのは、インメモリデータベース「HANA」を活用した統合基幹業務システム(ERP)パッケージのクラウド化やSaaSなどを中心とするクラウド分野。単なるクラウド化ではなく、アプリケーションの在り方そのものを再定義していくという。従来型ERPへの再フォーカスにも取り組む考えだ。
さらに、グローバルの知見を最大限活用する仕組みや組織を導入すること、国内については社内言語の英語化などを中心にグローバル人材の育成に力を入れることを表明した。「SAPジャパンは“販社に過ぎない”と言ってしまう社員も残念ながら存在するが、その感覚を根本的に変えていく」と話す。
自動車分野でドイツから専門知識を持つ者を呼び込むなど人材の“輸入”を進める一方で、日本人社員をどんどん“輸出”すると話した。
福田氏は、2006年に社内プログラムにのる形でMBA「INSEAD Regional Management Development Program」を修了。当時の社長で、現在は米SAPのボードメンバーであるRobert Enslin氏も後押ししたという。
今回の社長交代ついて、Enslin氏がリードしたのか福田氏に聞いてみたが「それは、Enslinに聞かなければ分からない」と答えるのみだった。
SAPは、2014年第1四半期の業績を説明するプレスリリースで、“日本は予想を下回った”との見解を公表していた。時期から考えると、この数値が今回の社長人事のベースになった可能性があるが、福田氏は「日本の業績も順調」と応じるにとどめた。
今後の目標について「日本市場の成長率がワールドワイドの数値を上回るようにしたい」と語った。
福田氏は1997年4月にSAPジャパンに新卒入社。当時は「基幹システムはUNIXで動くのか」といった議論があった時期だったと振り返る。入社後は、プロセス製造業の大手顧客を担当し、ERP導入による業務改革(BPR)などを推進した。
その後、食品や消費財、医薬、小売りなど大企業担当の営業部長を務め、2007年に新規製品事業を統括するバイスプレジデントに就任。買収したBusinessObjects日本法人の統合も指揮した。2011年からは、特定戦略顧客、流通サービス業、通信メディア業、プロセス製造業などの営業部門長を歴任した。