本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、元Sun MicrosystemsのScott McNealy 共同創業者と、日本HPの有安健二 執行役員の発言を紹介する。
「従来のエンタープライズベンダーが新たなクラウド時代を勝ち抜くためには、自ら大変革する必要がある」 (元Sun Microsystems Scott McNealy 共同創業者)

元Sun Microsystems Scott McNealy 共同創業者
日本サード・パーティ(JTP)が先ごろ開いたプライベートイベントで、元Sun Microsystems共同創業者のScott McNealy(スコット・マクネリ)氏がIT業界動向や人材育成をテーマに講演した。冒頭の同氏の発言はその質疑応答で、最近のITベンダー間の競争についてどう見ているかとの筆者の質問に対して答えたものである。
McNealy氏は1984年から20年余にわたってSunの会長兼最高経営責任者(CEO)を務め、同社を売上高2兆円規模の会社に育て上げた人物である。Sunは2010年にOracleに買収されたが、Sunが推進した「オープンアーキテクチャ」はITの世界に大きなインパクトをもたらした。その“伝道師”役でもあった同氏は、競合他社に対する歯に衣着せぬ発言がいつも話題を呼んでいた。
JTPとMcNealy氏の関係は、JTPが1990年代初頭からSunの日本での事業展開にあたって保守サポートを受託してきた経緯があり、2年前からMcNealy氏がJTPの最高経営顧問を務めている。同氏が2011年にSNSの新しい分野を開拓すべく創設した米Wayin社のサービスについても、JTPが日本で展開している。
そんなMcNealy氏の講演から、印象深かった話を2つ紹介しておこう。まず1つは人材育成について。同氏はSunの時代に、従業員に対して次のようなメッセージを常に発信していたという。
「ITスキルというのは、毎年2割ずつ古くなっていく。何もしないまま5年経つと、全く通用しなくなる。そうならないように常に磨いていかないといけないが、その責任は本人が51%、会社が49%持つべきだと考える。従って会社としてできる限りトレーニング環境を整えるので、それぞれが危機感を持ってスキルアップに努めてほしい」
筆者は1992年に初めてMcNealy氏にインタビュー取材して以来、同氏の言動に注目してきたが、この話は初耳だ。IT企業の人材育成における同氏の哲学とも言えるだろう。
もう1つは、最近のITベンダー間の競争についての見方だ。同氏はまず競争の背景として、クラウドコンピューティングの進展によって従来のエンタープライズコンピューティングが大きく変化していることを挙げ、ベンダーとして最も注目しているのは米Googleだと語った。