日本マイクロソフトが先頃公表した2015年1月からの法人向けクラウドサービス「Office 365」の値上げが波紋を呼んでいる。筆者は同社幹部から値上げの本当の理由を聞いた。
「価値と価格のバランスの見直し」が値上げの公式見解
日本マイクロソフトが10月下旬、2015年1月から法人向けOffice 365のサービス料金を最大3割引き上げることを明らかにした。詳しい内容は12月中に正式発表されるものとみられるが、ユーザーの間では波紋が広がっている。これまで同社は値上げの理由として、「製品・サービスの価値と価格のバランスは、グローバルで定期的に見直しており、今回もその一環となる措置である」とコメントしているだけだった。
そんな折、同社は11月21日、Office 365 を含めた法人向けの新しい統合ライセンス「Enterprise Cloud Suite(ECS)」を12月1日に提供開始すると発表した。ECSはクラウド化やモバイル化による多様なワークスタイルに対応するため、「Office 365 E3」、モバイルデバイス管理(MDM)などのクラウドサービス「Enterprise Mobility Suite」、クライアントOSであるWindows Entepriseの利用権「Windows Software Assurance per User」の3つを1つのライセンスとして提供するものである。
最大の特徴は、従来のデバイス単位のライセンスではなく、ユーザー単位のライセンスとして提供することだ。価格としては、それぞれ個別に新規購入した場合と比べ、ECSだと10~15%割安になるとしている。この新ライセンスのさらに詳しい内容については関連記事を参照いただくとして、この発表の中では法人向けOffice 365の値上げにまつわる話がなかったので、発表会見の代表者として説明に立った同社エンタープライズビジネス担当執行役専務の小原琢哉氏に、会見後ぶら下がり取材を行った。
為替変動による価格競争力の低下への懸念が本当の理由
法人向けOffice 365の値上げについては、「マイクロソフトは法人の間でOffice 365が今後一気に広がっていくとの確実な手応えを掴んだことから、このタイミングで値上げに踏み切ろうとしている。やり方が少々強引ではないか」といった声が筆者の耳にも入ってきている。
小原氏にそうした声を単刀直入にぶつけてみたところ、同氏は日本マイクロソフトとして正式に説明する機会があることをほのめかしながらも、次のように語った。
会見に臨む日本マイクロソフトの執行役専務の小原琢哉氏
「日本において法人向けOffice 365の価格改定を実施しようとしている最も大きな理由は、為替の変動によるものだ。日本でのOffice 365は円建てでビジネスを行っていることから、急激な円安によってグローバルとのバランスが取れなくなっている。そうした社内事情にも増して深刻なのは、競合するグローバルベンダーが日本において類似サービスをドル建てでビジネス展開しており、競争力の観点から強い危機感を持っている。お客様にはこうした事情をぜひともご理解いただきたい」
同氏はさらに、「日本でのOffice 365の価格は、グローバルの中でもともと低く設定していた」とも。それが最大3割という値上げ率の根拠にもなっているようだ。
果たしてユーザーの理解を得られるか。同社の丁寧な説明が求められるところである。