日本マイクロソフトは11月21日、大規模法人向けの新ライセンス「Enterprise Cloud Suite(ECS)」を発表した。12月1日から提供する。
ECSは、スマートフォンやタブレット、クラウドの活用を想定した「Enterprise Mobility Suite(EMS)」、6つのサービスを利用できる「Office 365 E3」、従来のデバイス単位でのライセンスではなく、ユーザー単位の登録となる「Windows Software Assurance per User」という3つの要素から構成。250台以上のPCを持つ企業に提供しているライセンス「Enterprise Agreement(EA)」の後継として提供される。
日本マイクロソフト ビジネスプランニンググループ ライセンシングリード 永井秀明氏
日本マイクロソフト 執行役 専務 エンタープライズビジネス担当 小原琢哉氏
最高経営責任者(CEO)であるSatya Nadella氏が推進する企業ビジョンである「モバイルファースト、クラウドファースト」を具現化したライセンス体系とし、「満を持して提供するモバイルファースト、クラウドファースト時代への回答」(日本マイクロソフト ビジネスプランニンググループ ライセンシングリード 永井秀明氏)としている。
ライセンス価格は案件ごとに応相談となるが、3つのライセンスを個別に新規導入した場合で10~15%程度割安となる。
ビジネスコアが再定義
ECS導入の背景について、日本マイクロソフト執行役専務エンタープライズビジネス担当の小原琢哉氏は次のように説明する。
「Nadella CEO体制となり、モバイルファースト、クラウドファーストのビジョンのもとマイクロソフトのビジネスコアが再定義された。中心となるのは、デジタルワーク&デジタルライフという“人”を中心に、さまざまなクラウド環境に対応するCloud OSというビジョン、幅広いデバイスのサポート、Windows開発プラットフォーム共通化実現という両輪が加わったものがマイクロソフトのコアとなる。その中で、高度な生産性、安全性、管理性を実現したのが今回の新ライセンスとなる」
新ライセンスのECSは、クライアントOS「Windows Enterprise」の利用権で従来デバイス単位だったWindows Software Assurance(SA)がユーザー単位となり、デバイス制限なしに変更され、そこにOffice 365、スマートデバイスを活用するためのEMSという3つの要素がセットになった。EMSは、次の3つのサービスを利用できる。
- Azure Active Directory Premium:社内とクラウドにアクセスするIDを統合して、単一のIDからどちらにもアクセスできるID管理サービス
- Microsoft Intune:iOSやAndroidの管理に対応するとともに、私物端末の業務利用(BYOD)を促進し、モバイルデバイス管理(MDM)機能を担うSaaS
- Azure Rights Management Service:iOSやAndroidにも対応し、取引先など社外ユーザーとのセキュアにデータを共有でき、使い慣れたOfficeファイルなどを簡単な操作で暗号化してデータを保護するRights Management Services(RMS)
Office 365 E3は、「Office 365 ProPlus」「Exchange Online」「Yammer Enterprise」「SharePoint Online」「Lync Online」「OneDrive for Business」の6つのサービスを利用できる。
Windows Software Assurance per Userは、従来のWindows SAとは異なり、デバイス制限がなく、ユーザー単位となるライセンスモデル。仮想デスクトップ基盤(VDI)はあらゆるデバイスで利用でき、別売りの「Microsoft Desktop Optimization Pack(MDOP)」は追加コストなしで複数デバイスに拡張できる。
ECSの概要
Windows Software Assurance per Userの特徴
「現行のPlatform Enterprise Agreement(EA)ではオンプレミスのみ対応しているが、今回のECSで限界を破って、オンプレミスだけでなく、真のハイブリッドクラウド環境の実現、マルチデバイス対応クラウドを実現している」(永井氏)とIT利用環境が拡大することをアピールしている。
すでにWindows SAを契約している場合は、好きな数のper Userで契約できる。新たに契約する場合は250ライセンス以上を申し込むことが必要になる。
契約については、インテック、ウチダスペクトラム、大塚商会、キヤノンマーケティングジャパン、SoftwareONE Japan、ソフトバンク コマース&サービス、デル、東芝、豊田通商、NEC、日本ヒューレット・パッカード、日本ビジネスシステムズ、日本ユニシス、日立システムズ、富士ソフト、富士通、リコーの17社のパートナー経由で行われる。
ECSの価格については、「ユーザー企業ごとに環境が異なるため、価格も大きく異なる」(永井氏)という。概算としてはEMS、Office 365 E3、Windows Software Assurance per Userを個別に契約した場合に比べ、10~15%程度のコスト削減になる見込み。