UPDATE 暗号技術へのアクセスや、クラウドサービスの普及、「Internet of Things(IoT:モノのインターネット)」によって、オーストラリア連邦警察(AFP)における従来型犯罪やオンライン犯罪に対する捜査に難題がもたらされている。
オーストラリアのキャンベラで開催中の「CeBIT GovInnovate」カンファレンスで現地時間11月26日、AFPの警視監であり対ハイテク犯罪のナショナルマネージャーであるTim Morris氏が語った。それによると、AFPにおける過去のデジタルフォレンジックでは令状に基づいてコンピュータを1台押収するだけで済んでいたが、今では犯罪捜査のために数多くのデバイスを押収する必要があるという。
Morris氏は「ほとんどの家庭には3台か4台のタブレットがあり、おそらくはデスクトップPC、そしてスマートフォンもある。ごく普通の捜査でも大量のデータが押収される。サイバー犯罪の捜査に至っては言うまでもない」と述べた。
「調べるデータの量は膨大だ。残念ながら科学捜査班の手に負えないOSがAppleやGoogleによって導入されたことで、困難な状況に拍車がかかっている」(Morris氏)
GoogleとAppleはいずれも、エンドツーエンドの暗号化によってデフォルトでデバイスをセキュアなものにすると保証している。Appleは「iOS 8」で暗号鍵をユーザーの手に委ねており、Googleも将来的に同様のことを行うと約束している。
両社は、これによってたとえ米国政府からの裁判所命令があった場合でも、電子メールやテキストメッセージ、写真といった、自社で保存している個人データを復号化できないことになると述べている。
Morris氏の発言は、米連邦捜査局(FBI)長官のJames Comey氏の発言と意を同じくするものだ。Comey氏は10月に、暗号化は法執行機関にとって「極めて重大な結果」をもたらす可能性があると述べていた。
またMorris氏は、デバイスの数が増えることで、AFPは捜査の一環としてどのようなデータを収集するかについて検討しなければならなくなるとも示唆した。
同氏は「われわれが行っていることの本質、すなわちIoTによって、さまざまな場所で、さらに多くのコンピューティングが実施されることになる」と語った。
「その結果、われわれからすれば話がどんどん複雑になっていく。デジタルフォレンジック担当チームが冷蔵庫を押収し、調査しなければならない状況を想像してもらえればよい。またトースターについても同様だ」(Morris氏)