では、Appleが貢献しているオープンソース資産に目立ったものはあるだろうか?
x86のPCで、無名のディストリビューションを使って「iOS」や「Mac OS X」の核となる部分を動かしたいなら、BSD UNIXから派生した「Darwin」がある。しかしiOSでは、iPadをジェイルブレイクしない限り、カーネルのカスタマイズも、デバイスの開発もできないし、Mac OS XやiOSアプリの核となるCocoa GUIのフレームワークもカスタマイズできない。これらが独占ソフトウェアで、クローズドソースだからだ。
挙げられるのは、多くのモバイルウェブブラウザで使われているHTMLレンダリングエンジンであるWebKitだ。これは、KDEのコミュニティーが作ったものから派生した。
設定不要のネットワークプロトコルであるBonjour(Zeroconf)もある。
たしかに、WebKitはウェブ開発コミュニティやモバイル開発コミュニティーにとって重要だが、DarwinやBonjourとなると、あまり重要とは言えないだろう。
あらかじめ言っておくが、わたしはMicrosoftで働いていたことがある。Microsoftは今ではWindows、Mac、iOS、Androidでソフトウェアを開発して販売しており、現在の経営陣は同社を「モバイル優先、クラウド優先」の企業にすると宣言している。
筆者の発言にどのようなバイアスがかかっているかを把握した上で意見を吟味してもらいたい。しかし、ここで言いたいのは、多くのアナリストやテクノロジ系ブロガーが過去に何度も指摘しているようなことではない。
企業を引きつけるには、今のWindowsやAndroidでやれているような、組み込みソフトウェア開発や垂直統合型開発ができなくてはならないのだ。それには、Appleはもっとオープンになる必要がある。
繰り返すが、消費者向けとしてはまったく問題なく受け入れられるものが、企業のニーズに合うとは限らない。
iPadは消費者市場では大きな成功を収めているが、ソフトウェア開発の問題を脇に置いたとしても、今のままではエンタープライズ向けとしては不十分だ。
その理由については別の記事で詳しく書いたのだが、読んでいない人のために、その要点となる部分を引用しよう。
求められているのは、企業内や垂直統合している他社との間で行われている、日常的な業務を処理できるように作られたデバイスだ。iPadが現在の持っている、アルミニウム製の極薄の形状は、企業のIT資産としてまったく向いておらず、多くの企業が使われなくなったiPadの山を抱えている。
企業向けのタブレットには、より大きな画面が求められるため、12インチ以上のディスプレイを持ったiPadが必要だ。さらに、ペン入力ができるデジタイザ機能と、手書き文字入力機能のサポートが必要とされる。長時間の入力に耐えるOEMのキーボードも必要だ。ユニファイドコミュニケーションのために、もっとよいスピーカーとカメラも要るだろう。
また、負荷の高いアプリケーションを処理できるよう、パワフルなCPUと十分なメモリが必要であり、1年か2年ではなく、4年程度のアップグレードサイクルが求められる。