重要な技術系職員の多くは経営者には向いていない、あるいは、経営者になることを求めていない。こうした職員はCレベル幹部(CEO、CTO、CFOなどCで始まる最高責任者レベルの幹部のこと)と同じくらい重要だということを企業は理解する必要がある。
多くの場合、昇進や昇給、ストックオプションといった企業のインセンティブを得るには、Cレベルの地位を頂点とする管理職を経ていかなければならない。キャリアの目標を定める際に、多くの職員が経営職を目指すのはそのためである。だが、経営者に向いていない人はどうすればいいのだろうか。
ITの世界には、エンドユーザーや上司と関わり合うために必要な駆け引きや対人関係よりも、マシンに向かってプログラミングしたり、データベースを構築したりする方が性に合っている、重要な技術系職員が大勢いる。そして、こうした重要な技術系職員がいなければ、企業の極めて重大な機能の多くが停止してしまう。テクノロジが大きな役割を果たす進歩的な企業は、このことを認識している。
今から20年以上前、R. Bradley Hill氏(当時は人材コンサルティング企業Hay Groupの経営コンサルタントだった)は、次のように書いている。「高度な専門的技術を組織が認識しなければ、新しいテクノロジや製品を開発し発展させる取り組みに損害が及ぶこともある。2本立ての昇進コースは、2つの等価値のキャリア職を提供する。1つは経営面での貢献を評価し、もう1つは技術面での貢献を評価する。2本立ての昇進コースは、高い採用コストや労働移動コストに直面している技術分野や、事業目標の達成に必要な人材の獲得に苦労している技術分野では、費用対効果に優れているかもしれない」
それ以降、テクノロジに強く依存する企業が行動を起こしてきた。バンキングプラットフォームを高度なテクノロジとアナリティクスに託してきた米中西部の大手銀行の最高情報責任者(CIO)は、「仮に私がデータベース管理者を雇用するとしたら、最低でも12万ドルの給料を用意しなければならないことは分かっている。従来、経営陣だけが享受してきたストックオプションなどの役得を追加する必要があることもだ」と認めた。エンジニアリング分野の優秀な人材をめぐって熾烈な競争が繰り広げられるシリコンバレーでは、企業が100万ドルの4年契約でエンジニアを雇うことが知られている。
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