TwoFiveは1月27日、メールプロトコルのPOP3とIMAP4に対応するサーバソフトウェア「Dovecot Pro」の販売とサポートを開始した。オープンソースソフトウェア(OSS)の「Dovecot」の商用ディストリビューションになる。Dovecotを開発するフィンランドのDovecotと契約を締結した。ISPをはじめとする大規模システム向けに販売していく。
Dovecot Proの税別価格は500メールボックス34万5000円から。稼働環境はx86版とx86-64版のRed Hat 5.x/6.x、CentOS 5.x/6.x。
Dovecotは、UNIX系OSで稼働するOSS。Dovecot社のチーフアーキテクトであるTimo Sirainen氏が中心となって開発し、2002年に初版が公開されて以来、世界中のメールストアの約50%で採用されているという。可用性と信頼性が高く、現在も積極的な技術開発が継続されていることからOSSのIMAPサーバソフトである「UW-IMAP」や「Cyrus-IMAP」からの置き換え導入が進んでいるとしている。
Dovecotの特徴は、フロントエンドの「Dovecot Director Server」とバックエンドの「Dovecot Store Server」の2階層構成ステートレスアーキテクチャとなっている。
Director Serverは、ハッシュ計算をもとにしてユーザーごとにStore Serverをバランスよく割り当てる負荷分散(ロードバランサ)の役割も担い、メールユーザーのMUA(Mail User Agent)が直接アクセスするPOP3とIMAP4のプロキシとしても動作する。
クラスタ構成が可能なDirector Serverは、グルーピング機能でどのユーザーがバックエンドのStore Serverのどこに割り当てられているかを共有しており、メールを適切に振り分ける。全てのDirector Server とStore Serverは、同時にステートレスで動作するので、メールサーバの障害でメールが受け取れないといった事態を回避できるという。
2階層構成の仕組みで共有ファイルシステムでのメールボックスでの運用も容易になり、ユーザー企業の規模にあわせて柔軟にステートレスな構成を容易に組めるとしている。システム稼働中でも随時サーバの入れ替えや追加が可能なので、ユーザー数やメール量の増加に応じて、容易にスケールアウトできるという。
Dovecotの構造(TwoFive提供)
商用版のDovecot Proでは、オブジェクトストレージの利用を可能にするプラグインが提供され、「Amazon S3」や「Microsoft Azure」などのクラウドオブジェクトストレージなども利用可能となる。Dovecotは、メールユーザーがストレージにアクセスして既読したメールをDirector Server上にローカルキャッシュするので、オブジェクトストレージ利用で課題となるネットワーク遅延の影響を最小化、ユーザビリティを維持したままスケーラビリティを獲得できるという。
TwoFiveでは、Dovecot Proで利用できるオブジェクトストレージ「Scality RING Organic Storage」(米Scality開発)も販売している。RING Organic Storageはペタバイト規模まで拡張可能なオブジェクトベースの分散トレージソフトウェア。Dovecot Proと組み合わせれば、ISPをはじめとする大規模メールシステムに最適と説明する。
Dovecot Proはインデックスデータを2分の1~3分の1に圧縮することでメールシステムのリソースの浪費を防ぐことのできる高速サーチ機能を搭載しているほか、TwoFiveによる付加価値として、OSSの「OpenLDAP」をベースにしたLDAPと、メール管理ソフトウェア「Modoboa」をベースに開発した日本語GUIも提供される。
TwoFiveは、大手ISPやASP、携帯事業者のメールシステムインフラで長年経験をつんだメールシステムの技術者などで2014年に設立された。日本のメール環境を向上させることを使命としてベンダーニュートラルな立場で最適な技術とサービスを組み合わせ、メールシステムの設計や構築、セキュリティなどについてコンサルティング、各種レピュテーションデータを提供している。