IDC Japanは3月18日、国内法人向けWAN(Wide Area Network)サービスの市場予測を発表した。国内法人向けWANサービス市場は全体としては成熟傾向を強めているものの、クラウドやモバイルなどに関連する分野においては、堅調な成長がみられる。
2014年の国内WANサービス市場規模は6931億円(前年比成長率マイナス0.3%)と、成長率がほぼ横ばいになった。
背景としては、企業の複数拠点を接続するWAN回線需要の飽和に加え、通信機器などの大容量化により、大量のトラフィックを効率よく安価に運ぶことができるようになってきたこと、さらに、高価な専用線からより安価な回線への移行が進んでいることなどが挙げられている。
このトレンドは今後も継続し、2019年に同市場の市場規模は6794億円、2014年~2019年の年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)は0.4%減になるとIDCでは予測する。
一方で、回線の種類によって、市場成長率に差があることも調査から明らかになった。成熟するWANサービス市場にあってなお継続的に成長しているのは、イーサネット専用線とベストエフォートL2/L3回線など。
イーサネット専用線はISPやクラウドサービス事業者、コンテンツサービス事業者など、いわゆる「サービスプロバイダー」が多く利用する回線であり、その成長はスマートデバイスの普及によるモバイルトラフィックの増加を背景としたサービスプロバイダーの設備投資の活発化が大きな要因となっている。
一方、ベストエフォートL2/L3回線の成長は、中堅中小企業のクラウドサービス利用の伸びが大きく影響している。
国内WANサービス市場: 回線の種類別 事業者売上額 2014年~2019年の年間平均成長率予測(IDC提供)
同社コミュニケーションズ シニアマーケットアナリストの小野陽子氏は以下のようにコメントしている。
「WANサービス市場においても、クラウドとモバイルの影響が鮮明になっている。また、通信事業者の直接の顧客として、エンドユーザーではなくサービスプロバイダーが台頭しつつある。これは、NTT東日本/西日本のフレッツ光の卸モデルへの移行や、モバイル通信におけるMVNOの増加と同じ構図である」