国内WANサービス事業者、全方位型と特定型の二極化--すみ分けが必要に

田中好伸 (編集部)

2012-11-20 13:17

 IDC Japanは11月20日、国内WANサービス市場予測を発表した。国内で契約、利用されるWANサービス市場を“国内WANサービス”市場と定義、広域イーサネットとIPベースの仮想私設網(VPN)という大きく2つのカテゴリに分けて分析している。

 2011年の国内WANサービス市場で、国内広域イーサネットサービス市場は前年比3.2%増の3012億円、IPベースVPN市場は前年比1.1%減の1648億円となっている。2012年からイーサネット専用線の分析も追加、2011年の市場規模は407億円となっている。

 カテゴリ別にみると、広域イーサネットは、データセンター向けの通信帯域を物理インターフェースの上限まで広げる機能である「トラフィックフリー」や一部帯域確保の回線への移行によるARPU(Average Revenue Per User)の低下は一段落して、今後は緩やかに成長していくと説明する。

 IPベースVPNは、内訳としてIP-VPN(スタンダード)やライトVPN、インターネットVPNの3つで構成。IP-VPN(スタンダード)の売上額が安価なサービスへの移行などで引き続きマイナス成長となっている。加えて、ライトVPNとインターネットVPNの売上成長率も徐々に鈍化している。したがってIPベースVPNは今後もマイナス傾向が継続すると予測している。


2007~2016年の国内広域イーサネットサービス市場のエンドユーザー売上額予測(2007~2011年は実績値、2012~2016年は予測値。出典:IDC Japan)

 カテゴリ別の通信事業者の市場シェアを2011年の実績値でみると、広域イーサネットではKDDI(20.0%)とNTT東日本(20.0%)がトップで、第3位はNTT西日本(13.1%)となっている。IP-VPN(スタンダード)では、第1位がNTTコミュニケーションズ(NTT Com、48.8%)でほぼ半数を占めており、第2位がKDDI(22.9%)、第3位がソフトバンクテレコム(19.8%)の順位になっている。

 国内WANサービスの事業者は「Arcstar Universal One」(NTT Com提供)や「KDDI Wide Area Virtual Switch」のようにさまざまなサービスを包括的に提供する“全方位サービス型”と、比較的特定のサービスに焦点を当てて提供する“特定サービス型”という2つのセグメントに分岐しつつあり、競争のすみ分けが重要になってきていると指摘。IDC Japanの鳥巣悠太氏(コミュニケーションズリサーチアナリスト)が以下のようにコメントしている。

 「全方位サービス型の事業者は、SIerやクラウド事業者を通じた間接的な販売力を強化して中堅中小企業の顧客を取り込む必要がある。特定サービス型の事業者は、既存顧客のニーズを探りながら、セグメント内での確固たるポジショニングを確立する必要がある」

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