ハイアールアジアは埼玉県熊谷市に新たな研究開発拠点「ハイアールアジアR&D」を開設。3月19日午前11時から開所式を行った。
2014年7月に設立したハイアールアジアの100%子会社であるハイアールアジアR&D株式会社の中核拠点であり、冷蔵庫とエアコンを中心とした白物家電製品の基礎研究、企画、デザイン、設計のほか、製品の品質確保に関わる業務を担う。ハイアールグループが世界5カ国で展開する研究開発拠点との連携や産学連携の共同研究への取り組み、異業種企業との共同開発などを中心としたオープンイノベーションの実現や技術交流、融合を促進する拠点にする考えだ。
埼玉県熊谷市に開設したハイアールアジアR&Dの新拠点
白物と黒物の境目がなくなる
ハイアールアジアR&Dは、JR熊谷駅から徒歩15分ほどの距離にあり、1万2426平方メートルの敷地面積に、6階建ての事務棟、5階建ての実験棟と2つの別棟で構成。延床面積は1万4929平方メートル。約200人が勤務することになる。
これまで、群馬県邑楽郡大泉町の旧三洋電機 東京製作所(現パナソニック・アプライアンス社の事業拠点)に置かれていた拠点を移転したもので、同研究開発拠点に比べて約1.4倍の規模になるという。すでに京都には約100人が勤務する洗濯機の研究開発拠点である「ハイアールアジアR&D京都」があり、日本での研究開発拠点は熊谷と京都の2拠点体制となる。
熊谷のハイアールアジアR&Dは2013年7月に着工、2015年1月に竣工。約70億円を投資している。「2012年にさら地となっている時点で、ハイアール会長の張瑞敏がこの地を訪れてゴーサインを出した。風水でもいい場所であることを確認している。年内には300人規模に拡大させる計画だが、それ以上のペースで拡大することになるだろう。新卒採用もここで行っていきたい」(ハイアールアジアR&Dの会長を兼務するハイアールアジア代表取締役社長兼最高経営責任者=CEOの伊藤嘉明氏)としている。
ハイアールアジア代表取締役社長兼CEO 伊藤嘉明氏
開所式には、伊藤氏のほかにHaier家電産業グループ・王嘩氏、ハイアールアジアR&D取締役社長の時振玉氏などのグループ幹部、埼玉県知事の上田清司氏、熊谷市市長の富岡清氏、ハイアールアジアがスポンサードしているBCリーグの埼玉県民球団 武蔵ヒートベアーズ球団社長の石田涼太郎氏などが参加した。
伊藤氏は「日本の技術を世界に発信できる場所として建設を進めてきた。ハイアールグループは世界に5つの研究開発拠点を持つが、ここが世界最大となる」と説明した
伊藤氏は続けて「1月14日に世界初の携帯型洗濯機やディスプレイ搭載冷蔵庫、スケルトン型洗濯機といった世界初の製品をたくさん発表した。こうしたアイデアは、旧三洋電機の白物事業の技術者、中国・青島のハイアールの技術者、欧米の技術者の知恵を結集し、日本から世界へ発信するために生み出したものである」と語った。
「熊谷の拠点は冷蔵庫の研究開発が中心となるため、ディスプレイ搭載冷蔵庫もここで担当することになる。言い方を変えれば、冷蔵庫機能付きディスプレイともいえる製品。その観点でみれば黒物家電になる。これからの世の中は、白物家電と黒物家電の境目がなくなる。それに先駆けて発表したものである」と伊藤氏は新拠点の意義を解説した。
「これはインターネットにもつながる製品であり、IoTデバイスのひとつにもなる。高齢になった両親が、この冷蔵庫の扉を開け閉めした時点で息子のスマホにその通知が届き、見守りサービスのひとつとしても利用できる。こうした製品の登場は、家電業界とその他の業界の境目がなくなることにもつながるだろう。熊谷の地で、こうした製品群の開発を加速させていきたい。地域に根差しながら生活に貢献できる製品を世界に向けて出していきたい。まだ発表している製品はほんの一部。数カ月後に、また新たな製品を紹介したい」(伊藤氏)
伊藤氏は「70億円という投資規模はハイアールグループが本気で取り組んだ研究開発拠点であるということを証明するものである。そして、私自らが代表取締役会長として、ハイアールアジアR&Dによるイノベーションを直接担当することになる。異業種の出身だが、この研究開発拠点は異業種連携の拠点であり、世界初が出てくる拠点になる。冷蔵庫の研究開発センターは、もともと群馬県にあったが、もっと東京に近い立地としたことで、冷蔵庫だけでなく、エアコンや洗濯機の一部の研究開発も行えるようにしたい」と今後を語った。
「ハイアールアジアR&Dは、三洋電機の技術者を中心に日本人技術者が99%を占める。ハイアールは中国の会社だが、日本人の知恵と知見、経験を生かしたい。そこに中国や韓国、アジアの技術の知見を組み合わせて日本の技術を世界に発信したい。私は旧三洋電機のメンバーと一緒に日本の技術力を世界に出したいと考えている。だが、それに足りないのはスピード。スピードを生かして、ここをハイアールアジアのロールモデルにしたい」(伊藤氏)
さらに伊藤氏は「私が考えている家電は『家電』ではなく、価値がある『価電』、あるいは可能性を持った『可電』であること。そうしたモノをここから出したい。かつての家電は日本から発信されるものが多かった。モノづくり復活、日の丸再生をここからやりたい」と述べた。
スマホやタブレット、テレビなどの日本市場への投入については、「すでに海外では展開している製品であり、日本の需要次第だと思っている。人と人、人とモノをブリッジするコミュニケーションプラットフォームが提供できるのであれば白物、黒物を問わずに投入したい」とコメントした。