このアップデートプロセスはMicrosoftの卑劣な企みだという人を何人か見たことがあるが、筆者はこれがアドウェアだとは思わない。むしろこれは完璧なターゲット広告であり、広告が表示されるシステムで現在稼働中の製品に無料アップグレードを提供するものだ。
隠されたコストはなく(ダウンロード自体によって発生するコストは除く)、ユーザーの明示的な同意なしにアップグレードがインストールされることもない。同意なしではインストールできないようになっている。ユーザーがクリックしなければならないライセンス契約が少なくとも1つは(実際はおそらく複数)あるからだ。
KB3035583はまだ、Windows 7向けの「Optional」(任意の)アップデートであることを忘れてはならない(Windows 8.1については「Recommended」(推奨)アップデートとなっている)。通常、初心者ユーザーは「Optional Updates」(任意のアップデート)には近づかないので、MicrosoftがそのアップデートをRecommendedカテゴリに移すまで、Windows 7ユーザーがWindows 10の広告を目にすることはないだろう。
このアップデートは、Enterprise Edition搭載マシンやドメインに参加したマシンには提供されていないことにも注意する必要がある。
ロールアウトはおそらく次のような形で進むはずだ。
Windows Insiderに対して、「Current Branch」(現行ブランチ)となるプレビュービルドが提供される。これは、以前の「Release Candidate」(リリース候補版)の代わりと考えるといい。
任意のKB3035583アップデートをインストールした全ユーザーの画面に広告を表示するAnticipationキャンペーンは、そのビルドがInsiderプログラムのメンバーに公開されるのと同じ時期に始まるだろう。6月下旬か7月上旬になるはずだ。
アップグレードは7月下旬から8月上旬にかけて、負荷を減らすために段階的にロールアウトされるだろう。
アップグレード済みPCが増えるにしたがって、Windows 10の新機能が効果を発揮するようになり、Microsoftのサーバへの負荷が軽減される見込みだ。ローカルネットワーク上でのアップグレードが大幅に高速化する可能性もある。Windows 10のオプションによって、アプリやOSアップデートのPtoP転送が同一ネットワーク上で、もしかするとインターネット上でも可能になるかもしれない。

もちろん、このパブリックリリースは数カ月にわたって徐々にロールアウトされるが、Microsoftは新機能アップデートを継続的に提供するだろう。既に判明していることだが、統合された新しい「OneDrive」同期クライアントはWindows 10の正式リリース後に登場する可能性が高い。2015年夏のWindows 10提供開始から、その1年後の最初の大規模な機能アップデート(開発コード名「Redstone」)までの間に、こうした小規模な機能アップデートが何度かリリースされるはずだ。
「Project Spartan」ブラウザや、新しい「Mail」「Calendar」アプリなど、「Windows Store」から提供されるものはすべて、Windowsの他の部分とは関係なく独自のスケジュールでアップデートされるかもしれない。
つまり、Microsoftは4種類の輪によってWindows 10ユーザーをサポートする。「Insider Fast」と「Insider Slow」では今後も早期にアップデートにアクセスできる。Current Branchはパブリックリリースチャネルとなる。そして、新しい「Current Branch for Business」では、企業が機能アップデートを数カ月遅らせて、問題のあるアップデートがビジネスプロセスに影響を及ぼすリスクを最小限に抑えられるようになる。
重要なのは、Windows 10への無料アップグレードをどれだけ多くの消費者と小規模企業がどれだけ早く受け入れるか、ということだ。最近の複数のデータポイントは、Windows 8搭載PCの10台に9台近くが既にWindows 8.1にアップデート済みであることを示している。今もWindows 7を使い続けるユーザーにアップグレードしてもらうことは、それほど簡単ではないのかもしれない。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。