日本郵政や日本郵便ゆうちょ銀行、かんぽ生命など日本郵政グループとIBM、Appleは4月30日、米国のニューヨークでトップ会談を実施。日本の高齢者向け生活サービスの提供に向け、高齢者向けタブレットなどを活用した実証実験を共同で行うことで合意したと発表した。
左からApple 最高経営責任者(CEO)Tim Cook氏、日本郵政 取締役兼代表執行役社長 西室 泰三氏、米IBM会長、社長兼 CEO Ginni Rometty氏
IBM、Appleと連携し、新しい高齢者向け生活サポートサービスの実現を目指す。両社とともに、2015年度下期より実証実験を開始する。
日本郵政によると、提携の理由は「価値観が共有できたため」という。日本郵政グル―プは暮らしに役立つ「トータル生活サポート企業」を目指しており、IBMがアクセシビリティ研究に基づいた高齢者に合ったインターフェースを開発している点と、Appleがヒューマンインターフェースに優れるデバイスなどを持っている点、これらが高齢者に適合すると評価したという。アプリケーション開発はIBMとAppleが、フレームワーク(iOS)やタブレットはAppleが提供するとした。
全国2万4000の郵便局ネットワークを活用、2014年時に3300万人程度という65才以上の日本の高齢者層に対し、地域に密着し地方創生に貢献するサービスの展開を目指す。
この業務提携ではその具体策として、タブレットなどを活用した新しい高齢者向け生活サポートサービスを2016年度から本格展開することを目指す。
具体的には高齢者の安否を確認する「みまもりサービス」の拡充を目指すほか、このほかのサービスについても段階的に拡充していく予定とした。
高齢者にタブレットなどを配布し、高齢者がタブレットなどを通じて家族や自治体や地域の事業者及び郵便局とつなげ、地域のバーチャルコミュニケーションの基盤と高齢者コミュニティを創造していくという。
また、全国2万4000の郵便局ネットワークを活用して、高齢者とのリアルのコミュニケーションを強化することで、バーチャルとリアルが融合したサービスを提供していくとした。
日本郵政グループの日本郵便株式会社がみまもりサービスを展開している地域などから選定し、地域の高齢者を対象に、IBMとAppleが開発した高齢者サービス向けタブレットなどを配布して、各種のネットサービスの提供や郵便局社員などによるリアルな生活サポートサービスを支援するという。
実証実験は、IBM、Appleと共同で10月以降に開始する予定で準備を進めており、サービスコンテンツとしては、ICTの利用を併用したみまもりサービス、親世代向け、子世代向けの「コミュニケーションサービス」、自宅での申込みによる「買い物支援サービス」、自治体と連携した「地域情報サービス」を挙げている。
IBMは提供する予定のアプリケーションの特長として、視覚や聴覚の障がい者でも活用できるiOS 8標準搭載のアクセシビリティや、薬を飲む時間や運動、ダイエットの通知、コミュニティ活動、食料雑貨の買い物支援、就業支援などの各種サービスなどの機能を挙げた。これらに直接アクセス可能な高齢者向けの専用アプリケーションを開発し、2020年に国内の400万~500万人へのサービス提供を目指すとした。
日本郵政の取締役兼代表執行役社長である西室泰三氏は「当社はテクノロジの分野において、世界で最も評価の高い2社とパートナーシップを結びます。これにより、日本のシニア世代が世界とつながり、そのつながりが深まることにより当グループのビジネスが広がり、そして、日本の社会や経済を強化する新たな手段を発見することを期待しています」とコメントしている 。
開発中のアプリケーション
国際大学GLOCOM客員研究員の林雅之氏は「超高齢化社会の課題先進国である日本において、世界に先駆けてIBMとAppleが、全国の高齢者を見守る仕組みをリアルとバーチャルなコミュニケーションを融合したサービスの実証実験として行うことは、大きなインパクトがある。将来的には、人工知能『Watson』の機能も積極的に取り組み、高齢者の個々の健康状態などにあわせて、最適なアドバイスが可能になり、介護の引き受け手の不足がこの先深刻化すると考えられる中で、介護負担を軽減する有効な支援ツールになる可能性がある」と説明している。