IBMとAppleは米国時間2月3日、エネルギー業界向けの「iOS」アプリ「Field Connect」をロールアウトした。同アプリは、アラート、通知、トレーニングといったパーソナライズ機能を提供する。
IBMはあわせて「IBM Insights Foundation for Energy」を発表し、クラウドアナリティクスソリューションを電力会社に売り込もうとしているが、Field Connectもその一環だ。IBM Insights Foundation for Energyは、個々の変圧器から配電網全体まで、配電網を監視する。
ここで重要なのは、エネルギー業界がこうしたアプリとそれを支えるインフラストラクチャを導入し使用することが最終的にどれだけ簡単になるのか、ということだ。両社の提携では、IBMの方がAppleより多くの仕事をこなす必要がある。Appleは基本的にハードウェアを、つまり大量の「iPhone」と「iPad」を動かしているだけだ。
Field Connectは、IBMとAppleの提携から生まれた業種別アプリ第2弾の1つだ。Appleの最高経営責任者(CEO)であるTim Cook氏は先週、公開予定のアプリ群の報道陣向け内覧会を行った。IBMとAppleは2014年12月、さまざまな業界を対象とする10種類のモバイルアプリを発表している。2015年第1四半期中にさらに12種類のアプリがリリースされる予定で、Cook氏によると、両社の提供するアプリ数は2015年中に100種類に達する見込みだという。
Cook氏は次のように述べた。
「わずか1カ月強の間に12社以上の法人顧客が最初のクライアントとして契約し、iPhoneとiPad、そして『IBM MobileFirst』ソリューションによって組織の変革に取り組んでいる。それらの組織には、米国で7番目に人口の多い郡であるマイアミデイド郡や、1000店以上の小売店を展開し、世界80カ国以上に商品を出荷するAmerican Eagle Outfittersなどがある。新規顧客の数は急速に増えているところだ。IBMはさらに、『IBM MobileFirst for iOS』ソリューションで従業員に力を与えることを目指す130社以上の企業に関与しており、その企業の数も増え続けている。この提携にこの上なく満足している」
Cook氏がそれほどまでに上機嫌な理由は、両社の提携におけるAppleの主な役割が、iPadとiPhoneを法人顧客に提供し、IBMの協力を得てそれらのデバイスのサポートと管理を行うことだからだ。IBMはと言えば、テクノロジ業界で最もクールな企業の1社と付き合うことができる。
では、提携におけるIBMの役割を考えてみよう。電力会社向けのField Connectアプリは、実際のところフロントエンドでしかない。Appleのデバイスもフロントエンドである。IBMにとっての成功は、自社のモバイルおよびアナリティクススタックによって、バックエンドの変革を実現することだ。
もちろん、その変革への取り組みにおいて、アナリティクスやモバイルスタック、そして顧客とともに革新を行う大勢のコンサルタントといったIBMの強みが活きてくる。言い換えると、IBMが売り上げを伸ばすのはAppleより難しい。顧客は「iOS」を気に入って、Apple製品で標準化したいと考えるかもしれないが、この提携で本当に重要なのはテクノロジ全体だ。IBMは変革がうまくゆくことを望んでいる。
計算してみよう。AppleとIBMによる個々のアプリの発表は、それほどの利益を生まないだろうし、Appleがフロントエンドの利益の大半を手にすることは間違いない。今後注目すべきは、IBMがバックエンドで契約を勝ち取れるのかどうかということだ。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。