自治体がしておかなければならない課題とは
今回のマイナンバー制度導入にあたっては、自治体の場合も一部の組織の対応などではとどまらなくなるのは明らかであり、全体的な対応が必要となるため組織の見直しとともに、制度の運用や業務からシステムに至るまでの流れを一元的に統括する部署の設置などが求められる。
日立コンサルティングが自治体向けに提供するコンサルティングサービスでは、番号対応の対象範囲の整理に始まり、制度面やシステム面、業務面の影響調査、特定個人情報保護の評価を実施、制度導入計画の策定につなげ実際の制度、システムの整備、導入へと向かう。
ビジネスチャンスは、施行後3年先までは不透明
マイナンバー制度は、企業にとって、何らかのビジネスチャンスをもたらすのだろうか。マイナンバー法では、法人にも番号が付けられる。この法人番号は、13ケタで登記のある法人に対しては登記番号を活用し、国税庁が付番する。登記のない法人については、新たに独自の番号を国税庁が付番する。法人番号は個人番号とは異なり、原則として公表される。
現行のマイナンバー法では、個人番号の利用は社会保障、税、災害対策などの分野で、必要な限度での利用に限定されており、原則として民間が利用することは認められていない。「いまのところはどの企業も、制度への対応に手いっぱいというところがほとんどだろう」(山口氏)
しかし施行後3年後には法律の施行状況などを勘案し、検討したうえで必要があると認められれば、民間での利用にも道を開いている。「医療、金融、自動車登録などが考えられる。まだもう少し先になるが、マイナンバーとビッグデータを結びつけたサービスといったあたりが出てくると、大きく成長するかもしれない」(山口氏)という。
2014年には安倍政権が「第3の矢」として位置づけた改訂版の「日本再興戦略」で、「金融、医療・介護・健康、戸籍、旅券、自動車登録 などの分野を中心に、マイナンバー制度の利用範囲拡大の方向性を明らかにする」と明記している。
楽天の三木谷浩史氏が理事を務める新経済連盟はこれに対し、計画の進捗が分かる明確な工程表を作ることを提言。医療、介護、健康分野についても機関別符号を利用することを通じてマイナンバー制度のもとで運用されることによりIT投資と効率的な行政が実現できると指摘している。
政府は、女優の上戸彩さんを起用して、マイナンバー制度が10月から通知されることを、周知、宣伝するためのテレビCMの全国放送を実施した。10月には通知が始まるが、政府の調査では同制度への国民の関心は低い。
1月に実施された調査では、「内容は知らなかったが、聞いたことがある」は43.0%。「知らなかった」は28.6%であり、合わせて、約7割になる。「内容まで知っていた」は28.3%だった。今回のようなCMだけで、周知徹底のための活動は十分であろうか。
企業の場合も、未だ、中小企業は関心が高いとはいえないようであり、2016年1月のマイナンバーの利用開始までに、解決しなければならない課題は少なくない。