自分の最初の車や、自分が生まれた病院を思い出せなくてイライラしたことがある人も多いのではないだろうか?
Googleの調査によれば、人をいらつかせるこの手の「秘密の質問」の効果は、期待されるほどではない。同社は米国時間5月21日に、興味深いが、最後まで読むと憂鬱な気分になる記事を投稿した。アカウントの復旧に使用された「数億件」の質問とその答えを調査し、「ハッカーが答えを推測できる可能性を調べた」のだという。
その結果分かったことは、「秘密の質問」に対するユーザーの答えは、それほど安全ではないということだった。対不正利用研究の責任者であるEllie Bursztein氏と、ソフトウェアエンジニアIlan Caron氏の投稿には、「秘密の質問は、それ単体でアカウント復旧の仕組みとして使用するには、安全性も信頼性も十分ではない」と述べられている(両氏らは、調査結果を先週イタリアのフローレンスで開催された国際World Wide Webカンファレンスで発表した)。
例えば、「好きな食べ物は何ですか?」という秘密の質問の場合、英語が母国語の人であれば、ハッカーが「ピザ」と回答すれば、それが当たりである可能性は19.7%だ。ユーザーがたまたまスペイン人で、秘密の質問が「あなたの父親のミドルネームは?」というものであれば、ハッカーは10回の推測で、21%の確率で正しい答えを引き当てることができる。その結果、銀行口座が乗っ取られるかも知れない。
自分は賢いと思っているユーザーをいらつかせる事実も明らかになった。一部のユーザーは、ハッカーに一杯食わせようとして、意図的に間違った答えを選択している。ところが、あまりにも多くの人が同じ偽の答えを選んでいるため、ハッカーにとってはそちらの方が推測しやすいのだ。
もう1つの腹立たしい問題は、ランダムに推測するのが難しい回答に関するものだろう。その問題とは、答えを入力した本人自身が、その答えを忘れてしまうことだ。筆者の経験では、問題の一部は、回答の細部を忘れてしまうことにある。正確な答えでなければ、機械は受け付けてくれない。
ところがGoogleは、本来正しく答えられるべき「あなたの最初の電話番号は?」という質問に対しても、成功率は55%にすぎないことを発見した。
Googleが最後に検討した要素は、質問を1つではなく2つに増やしてはどうかということだ。当然、こちらの方が安全になるはずだ。
確かに、ハッカーが10回の推測で、両方の(簡単な)秘密の質問に正しく答えられる可能性は、わずか1%になった。問題があるとすれば、元々答えを設定したユーザーが正しく答えられる可能性も、59%しかなかったということだ。
Googleは、アカウント復旧のための情報を常に最新のものに保っておくことを推奨している。しかし、サイトを運営する側も、SMSテキストでバックアップコードを送るなど、別の手立てを取るべきだ。
これが、何もかもが白日の下にさらされる今の世界で、上辺だけでもプライバシーを保つための代償なのだ。これだけ多くのサイトでパスワードや秘密の答えを聞かれれば、すべてを覚えておくことなどできない。かといってそれを書き留めておけば、やはり安全ではないように思える。
いずれ、個人用のロボットがこういった仕事をしてくれるようになるかもしれない。もっとも、ロボットが自意識に目覚めれば、今度は彼らに裏切られるのかも知れないが。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。