編集部からのお知らせ
ZDNet Japanが新しくなりました!
New! 懸念高まる産業機器のセキュリティ

IoT×AIを実ビジネスにする要件--東芝、富士通、竹中工務店が議論

羽野三千世 (編集部)

2015-06-10 16:49

 IoT基盤が生成する多種多様なビッグデータと、人工知能(AI)技術のようなデータアナリティクスが融合することで、新しいビジネスモデルが生まれようとしている。しかしながら、現状では漠然としたビジネスケースが議論されるにとどまり、事業として収益化に成功している企業は少ない。IoT×アナリティクスをビジネスベースに乗せるためにはどのようなアプローチが必要なのか。

 6月8日、都内で開催されたITの総合イベント「Interop Tokyo 2015カンファレンス」で、東芝、富士通、竹中工務店の3社が、「IoT:ビッグデータ・人工知能との融合が生み出す新ビジネス」と題して、IoT×アナリティクスのビジネス化をテーマにパネルディスカッションを行った。モデレータは東京大学大学院 教授の江崎浩氏が務めた。

ROIを確保した上でアナリティクスに手を出す

 東芝は、「Chip to Cloud(C2C)」のコンセプトに基づき、同社が開発する家電製品、医療機器、電力システムなど幅広いデバイスにIoTの仕組みを取り入れている。C2Cとは、デバイスに組み込むチップにクラウド連携機能を搭載し、従来デバイス上で動作していた機能の一部をクラウド側に移行するアプローチだ。その結果として、デバイスからのさまざまなデータがクラウドに蓄積される。


東芝 インダストリアルICTソリューション IoT事業開発室 光井隆浩氏

 東芝 インダストリアルICTソリューション IoT事業開発室の光井隆浩氏は、「アナリティクスを目的に、デバイスからデータを取得するIoTに投資をしていのではなく、デバイスの機能追加に投資をしている」と説明する。

 IoT×アナリティクスのビジネス化のハードルの1つは、アナリティクスでどのような価値が見いだせるのか、実際にデータを取得して分析してみないと明確にならない点だ。分析のためにはIoT基盤に先行投資をする必要があるわけだが、この投資対効果(ROI)が測りづらい。東芝のIoTのアプローチは、“デバイスの機能向上”というROIが保障されたところに、さらなる付加価値を追求する取り組みとしてデータアナリティクスを位置づけているのが特徴だ。

 ベースラインの価値を確保した上で、東芝では、C2Cの仕組みを搭載したデバイスから取得したデータを、クラウドとエッジ(ゲートウェイ)の2カ所のプラットフォーム上で分析する「分散アナリティクス」を行っている。どちらの分析基盤を選択するかは、アナリィクス結果の用途による。


クラウドとエッジで分析する「分散アナリティクス」の概要

 例えば、エッジ側では、デバイスからリアルタイムに収集されるデータをゲートウェイエージェントでストリーム処理し、即時にデバイスへフィードバックする。「IoTのデータアナリティクスを、製造プロセスのような数秒単位での即時制御に活用するためには、クラウド上で分析エンジンを回してフィードバックするやり方では間に合わない」(光井氏)。自動車の運転制御など、分析結果を極めて低遅延でフィードバックする必要がある用途では、このような、ローカルに閉じたIoTとアナリティクスの仕組みが適しているという。

農業IoT、利益貢献はこれから


富士通 イノベーションビジネス本部 ソーシャルイノベーションビジネス統括部 渡邊勝吉氏

 続いて、富士通 イノベーションビジネス本部 ソーシャルイノベーションビジネス統括部の渡邊勝吉氏が、同社の農業クラウド「Akisai」について説明した。Akisaiは、農業生産管理機能をSaaS型で提供する。畑の温度湿度や日射量、作物の生育データといったデータをセンサで収集、クラウド上で分析するIoT×アナリティクスの仕組みを採用している。アナリティクスの結果に基づき、最適な栽培スケジュールの提案や、生育・収穫予測などを行う。

 渡邊氏は、キャベツの収穫時期を予測して栽培計画を最適化することで売り上げが1年間で30%増加した事例や、ミカンの栽培データを見える化して果樹試験場から遠隔アドバイスを得る仕組みによって、収穫量に占める高糖度ミカンの比率が3年間で3倍に増加した事例などを紹介した。

 Akisai導入によって、農作物の収穫量や売り上げは増加する。しかし、「センサの設置コストなど鑑みると、まだ増益に貢献するには至っていない」(渡邊氏)のが現状だ。

電力自由化を見据えたビル特化M2M


ビル設備に特化したM2Mプラットフォーム「ビルコミュニケーションシステム」

 建築会社の竹中工務店は、ビルの照明や空調、人感センサなどのデータをクラウドへ吸い上げるビル設備に特化したM2Mプラットフォーム「ビルコミュニケーションシステム」を開発し、試験的にアナリティクスを行っている。

 実践しているデータアナリティクスは、バッチ処理とトランザクション処理の2手法ある。バッチ処理のアプローチでは、電力消費量などのデータをクラウドに蓄積し、機械学習により建物内の人や設備の活動を予測。それぞれの建物に応じた最適な環境を提供することを目指す。分析基盤としては、機械学習サービス「Azure Machine Learning」を使っている。

 トランザクション処理では、クラウド上のストリームデータ分散処理基盤「Apache Storm」を使い、ビル側から1分間に4000件のデータをクラウドへ送信。Apache Stormで、1データあたり3999回の演算を実行する。この処理により、例えば、数分後の電力消費量を予測して電力設備を制御するなど、ビル内のそのときの状況に応じて、設備をリアルタイム制御可能になることが期待されている。


竹中工務店 粕谷貴司氏

 ビルのM2Mやデータアナリティクスでは、ROIをどう考えるのか――。江崎氏の問いかけに対して、竹中工務店の粕谷貴司氏は、「電力自由化が起こったとき、建物の電力消費量の制御や予測は当たり前の要件として、ビルオーナーに求められるようになる。十分、ビジネスとして成立するだろう」と回答した。

ZDNet Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

Special PR

特集

CIO

セキュリティ

スペシャル

NEWSLETTERS

エンタープライズ・コンピューティングの最前線を配信

ZDNet Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]