Huawei Technologiesは6月に、ドイツミュンヘンで3回目となるイベント「Huawei Europe Innovation Day 2015」を開催した。このところの好景気で欧州連合(EU)の政治と経済で牽引役となっているドイツ、そのドイツで官民が協力してプッシュする「インダストリー 4.0」をテーマに、Huaweiの幹部や提携企業らがビジョンや取り組みを語った。
日本同様、戦後製造業で復興したドイツでは、現在でも製造業が経済を下支えしている。インターネットと無線通信を活用して、古い製造業を刷新し、経済と産業を活性化しようというのがインダストリー 4.0の裏にある狙いだ。テクノロジー好きのアンゲラ・メルケル首相も推進しており、その予算は2億ユーロといわれている。
Huawei 最高戦略マーケティング責任者 William Xu氏
Huaweiの最高戦略マーケティング責任者を務めるWilliam Xu氏は15日の基調講演で、「今後20~30年で情報社会になる」と展望する。
同社は「Better Connected World」をとして情報社会、デジタル経済への転身をプッシュしているが、Xu氏によると、「2014年のモバイル接続は80億件。これは人がモバイルに接続している数だが、人だけではなく、車や家電、さらには製造の場でのセンサーといったさまざまなモノにも拡大し、2025年にはこの数が1000億件になると見込む。われわれ人間はつながることでメリットを享受しているが、これからはモノとモノがつながることで効率化の改善、そしてイノベーションの加速が図れる」という。
インダストリー 4.0については、自社のドメインである接続の部分で、2020年に開始が見込まれる5Gへの研究開発を進める。5Gは下り最高10Gbpsという伝送速度、1ミリ秒以下の遅延などの実現を目指す次世代通信規格で、Xu氏は「インダストリー4.0の主要なエネーブラーになる」と述べる。
Huaweiは5Gの研究開発に6億ドルを投資することを明らかにしているが、通信規格の標準化でリードしてきた欧州では、先にベルギーに5Gにフォーカスした研究開発施設を開設するなどの取り組みを進めている。
15と16日にイベントが開催されたミュンヘンでは、ミュンジェン工科大学、ミュンヘン市、そしてバイエルン州の両政府と「5G Vertical Industry Accelerator」としてテストベッドを立ち上げている。「欧州はデジタル化によりグローバルの産業エコシステムでリードできるだろう。これはHuaweiが標榜する”Better Connected World”の構築につながる」とXu氏。
Huaweiのインフラ戦略は「1-2-1」。最初の”1”は、単一の統合されたIoTプラットフォームのことだ。データの収集と分析の土台となるもので、提携企業など外部企業が接続可能なオープン性を特徴とする。「データは産業界全体に価値を創出する」とXu氏。”2”は、無線/有線、Wi-Fi/LTEなどのアクセスモードを指す。
最後の”1”は、Huaweiが独自に開発し、5月に発表した最新の「LiteOS」だ。容量は10KB以下で業界最小とXu氏。消費電力効率にも優れ、オープンソースとして公開するとのことだ。同OSを利用してパートナー企業はIoTサービスを構築できる。
すでに事例もある。同イベントではアムステルダムのスタジアムArenAを中心としたスマートシティプロジェクト、Audiのスマートカーなどだ。例えば地元サッカーチームAFC Ajaxのホームスタジアムでもあり、複合イベント施設のArenAでは5万3000人の収容能力をサポートすべく高密度のWi-FiをHuaweiが手掛けた。これにより、試合中にFacebookで写真や動画をシェアしたり、プレイヤーのリアルタイムデータにアクセスするなどのことが可能になり、メンバーにはパーソナライズされたサービスも提供する。
Xu氏は最後に、Huaweiが今後も欧州連合(EU)の科学技術とイノベーション促進政策「Horizon 2020」などの取り組みに協力していくことを表明した。