サーバ、ネットワークとソフトウェアを使ってサーバベースのストレージを構築する、ストレージの管理インターフェースをソフトウェアで抽象化するなど、「ソフトウェア定義ストレージ(Software Defined Storage:SDS)」の動きが活発化している。そこでZDNet Japan編集部では、ITベンダー4社のストレージビジネス担当者にお集まりいただき、SDSの現状について意見を交換していただいた。
果たしてSDSはストレージの主流となるのか。SDSに取り組むとして、どの部分から導入を進めるべきか。SDSを検討している方は、座談会で交わされた意見をぜひご参考にしていただきたい。
座談会に参加していただいたのは、デル ストレージ・ビジネス本部長の小島由理夫氏、富士通 プラットフォーム技術本部 プロダクトソリューション技術統括部シニアディレクターの荒木純隆氏、日本アイ・ビー・エム IBMシステムズ・ハードウェア事業本部 ストレージ・システム事業部長の波多野敦氏、EMCジャパン マーケティング本部フィールドマーケティング部プリンシパルマーケティングプログラムマネージャーの若松信康氏の4人。
仮想化レイヤで複雑化
――IT環境が大きく様変わりしたことで、ストレージのあり方も以前より難しくなっているように感じます。その難しさに対する現実解としてSDSが位置付けられると思うのですが、まずはストレージの現状についてお聞かせください。
デル ストレージ・ビジネス本部長 小島由理夫氏
小島氏:デルの顧客層は大企業から中堅企業まで非常に幅広いのですが、IAサーバとストレージを統合するアプローチ、IAサーバ内蔵ディスクとJBOD(Just a Bunch Of Disks)を活用するアプローチのストレージ、すなわちSDSへの関心が高まってきていることを実感しています。実際の案件も増えており、その主な要因はIAサーバを徹底活用することで従来の専用ストレージと比べて大幅にコスト削減できる点であると考えています。SDSへの移行は、大きなIT予算を持つ大企業ではなく、中堅企業からまず進んでいくものと思います。デルはIAサーバの主要ベンダーなので、今後SDSビジネスとの相乗効果が期待できます。
荒木氏:ストレージ管理が複雑化した主な原因は、やはりサーバの仮想化が進展したことです。仮想化レイヤが入り込んできたことで、バックアップひとつにしても、物理環境だけを相手にしてたときとはやり方が大きく変わります。
特に日本の場合は、ストレージの専任管理者を置いているケースが少なく、バックボーンがしっかりしていないと、技術的な変化に追従できないという問題があります。SDSに関して言えば、当社では「ペタバイトクラスのデータを効率的に管理するためにSDSが使えないか」という問い合わせを受けることが多くなったように感じています。
日本アイ・ビー・エム IBMシステムズ・ハードウェア事業本部 ストレージ・システム事業部長 波多野敦氏
波多野氏:IBMの場合は2年前から、変化し続けるアプリケーション処理の特性に応じて瞬時にかつ自動で最適なシステム資源を配置する“SDE(Software Defined Environment)”のコンポーネントとしてSDSの概念が使われました。実際の案件でSDSというキーワードが使われるようになったのはここ1年くらいです。
IBMは、SDSの基盤となる技術や製品は長いもので15年以上前から提供を続けていたわけですが、市場的にはやっとストレージまで仮想化が届いてきたか、という思いがあります。
若松氏:全般的な傾向として、ストレージのライフサイクルが短縮傾向にあるというのが、最近の実感です。主な理由は3つあり、一つ目は、アプリケーションのライフサイクルの短縮化、二つ目はストレージに求められるスピードやデータ量の変化が加速していること。
そしてもう一つは、データセンター事業者を中心に、TCO(総所有コスト)の観点から、1つの製品を長く使うよりもどんどん新しい製品に買い替えていくという動向もあります。そうなると、データ移行が頻繁に発生して、ハードウェア依存型のストレージは足かせになるため、それらをSDSで解消したいというニーズがあります。
パブリッククラウドという外圧
――ストレージへの考え方が変わってきたということでしょうか。
小島氏:ストレージだけ切り出して評価することがナンセンスになってきているように感じます。例えば、サーバ群の中に入っているフラッシュプールをティア1、外部ストレージの高速フラッシュをティア2、低速HDDをティア3として自動階層化するようなソリューションでは、外部ストレージだけでストレージを評価することはできません。システム全体で考える必要があります。
波多野氏:SDSもストレージのアプローチを変える大きな要因の1つですが、IT投資全体のあり方を大きく変えているのがクラウドです。IT部門にとってパブリッククラウドは外圧と言ってもよいでしょう。パブリッククラウドをオンプレミスとうまく連携させることができるか、という新しい評価軸が出てきたことで、サーバはどうあるべきか、ストレージはどうあるべきかといった価値観が変わってきています。