「レガシーはすべてのITにとって、終わることのない問題である」
これは、調査会社Saugatuck TechnologyのアナリストであるBrian Dooley氏の言葉だ。Dooley氏は、揺るぎないレガシーシステムとデジタルビジネスの需要の間の力関係について、現状を説明した。
もちろん、少しでもITに携わった経験を持ち、レガシーシステムが引き起こすさまざまな問題を理解している人なら、そんなことは先刻承知だろう。ここでいうレガシーシステムは、融通の利かないシステムの奥深くに潜むプロセスや論理のことで、はるか昔に組織を去った人々によって設計およびプログラムされた可能性が高い。
「レガシー」は、非常に相対的な言葉であることに留意してほしい。例えば、「Windows 8.1」は今ではレガシーシステムとみなすこともできる。定義をはっきりさせておくと、Dooley氏が言っているのはメインフレームとCOBOLベースのアプリケーションのことである。
市場では、この問題に対処する、レガシーシステムを近代化するためのソリューションが何年も前から数多く提供されている。COBOLコードをマネージドコードに変換したり、コモディティサーバが扱いやすい言語に再コンパイルしたりする環境もそれに含まれる。クラウドとサービス指向型アーキテクチャ(SOA)では、レガシーアプリケーションの重要な部分をオンライン環境に抽出することができる。IBMの独自メインフレームである「IBM System z」シリーズと「IBM zEnterprise」シリーズは、「z/OS」と同じシステムリソースを持ち、同じマシンで稼動する複数の環境(LinuxとUnixを含む)をサポートする。
しかし、こうした近代化ソリューションだけで十分なのだろうか。おそらく十分ではない。デジタル化や変革、技術革新のペースが加速する中で、多くの組織は今もレガシーシステムへの投資に縛られている。Dooley氏は、金融や保険、政府、ヘルスケアの分野では、今もレガシーシステムが重要なアプリケーションを動かしていると指摘する。これらのシステムは頑として「変化に対応しないままだ」と同氏は話す。「これらのプログラムを変更するには、多額のコストがかかり、確かな結果が得られない可能性もある。またこうしたプログラムは極めて複雑で、文書が十分に揃っていない可能性もある。多くのプログラムは何度もパッチが適用されており、プログラマーにとっての落とし穴がいくつもできてしまっている。COBOLのスキルが消え続けていることを考えると、なおさらだ」(Dooley氏)