Platform as a Service(PaaS)のプロバイダーや環境(ミドルウェア、データベース、開発ツール)への移行は、魅力的に思えることが多く、ベンダーやアナリストは(そしてテクノロジを扱うメディアも)それを最も重要なこととして、積極的に推奨している。しかし、業務のプロセスや企業のルールがしみ込んでいるであろう、十分に定着したオンプレミスのソフトウェアやシステムから離れることは、苦痛を伴う場合がある。何かがうまく動いていて、それが長年にわたって続いているなら、なぜそれを変える必要があるだろうか。
PaaSへ移行する方が、社内システムに留まるよりも理にかなったものになるという、「転換点」があるのかもしれない。OracleのSubramanian Iyer氏は、最近の投稿で、この転換点が迫っていることを示す、4つの兆候について説明している。
総所有コストがハードウェアや永続ライセンスの費用に左右される:あなたの組織は、メンテナンスに多額のIT予算を支出しているのではないだろうか。社内のプラットフォームには、ハードウェアやソフトウェアライセンスへの先行投資が求められるが、それらは使用されているかどうかに関係なく、こうしたライセンスは数年おきに更新し、新しいものにする必要がある。一方で、少なくとも理論的には、PaaSのサブスクリプションは、実際に機能しているプロジェクトや要件と結びつけることができる。つまり、ユーザーは「プラットフォームサービスが必要な期間だけ契約し、プロジェクトが先延ばしになった場合には契約を解除することができる」のだとIyer氏は言う。さらに、ハードウェアコストも必要ない。Iyer氏は、サポートのコストも最小限にできるが、絶え間なく進化するプラットフォームインフラストラクチャのプロジェクトを完遂するためには、専門知識を有する人を雇用しなければならない可能性があるとも主張している。
社内の煩雑な手続きのせいで、市場投入までの時間がかかり過ぎる:あなたの組織は、新しい種類の製品やサービスを十分なスピードで市場投入できないせいで、勢いが衰えていないだろうか。新たな取り組みをスタートさせるには、社内の階層のあちこちで承認を受けることが必要になる場合が多い。PaaSベースのサービスは、イノベーションを起こすために必要なツールやインフラ要素を素早く手に入れられる近道を提供してくれる。
IT部門が、価値の提供より資産の管理に多くの時間を費やしている:IT部門が単なる「モノのマネージャー」になっていないだろうか。PaaSベースのサービスに移行することによって、ITマネージャーは、マシンやソフトウェアのパッチを心配する代わりに、社内外のクライアントにより良いサービスを提供することに力を注げるようになる。理論上は、そうした心配事の多くの部分がPaaSプロバイダー側に移ることになる。もちろん、最終的には、PaaSベンダーが送ってくるサービスの稼働時間やパフォーマンス、コストに関する責任は引き続きIT部門が負うので、そうした心配事が完全になくなるわけではない。
新しいアプリケーションを立ち上げるのがかなり大変である:幹部らが、会社の方向性を変えることを話題にした時に、IT部門は素早く身を隠してはいないだろうか。「PaaS環境は、アプリケーションとインフラストラクチャプラットフォームを分離させ、管理と調達の複雑さを軽減する」とIyer氏は語る。最終的にはどうなるだろうか。さまざまな種類のより多くのアプリケーションを、バグや故障も低減させつつ、より速いペースで市場に投入できるようになる。
もちろん、全てがオンプレミス、あるいは全てがクラウドというのではなく、ハイブリッドの世界が続くだろう。正しく機能し、反応性に優れた企業ITを目指す上では、ローカルサーバで稼働するソリューションや、クラウドプロバイダーでは扱わないソリューションが今後も必要になるはずだ。
(情報開示:筆者は、この記事で言及したOracleのためのプロジェクトに過去12カ月携わってきた)
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。