松岡功の一言もの申す

メインフレームはクラウド時代に生き続けるか

松岡功

2015-01-21 12:00

 日本IBMが先頃、メインフレームの新製品を発表した。企業システムのクラウド化が進む中で、果たしてメインフレームは今後も生き続けるのか。

メインフレームは「オープンなプラットフォーム」

 日本IBMが先頃、米IBMとほぼ同じタイミングでメインフレームの新製品「IBM z13」を発表した。従来メインフレームが得意としてきたトランザクションの高速処理のみならず、トランザクション処理を行いながらデータ分析を効率的かつセキュアに実現するシステムだという。

 IBMはz13について、「10億ドル以上の投資、5年の開発期間、500以上の新しい特許によるイノベーションの成果であり、顧客に高付加価値で革新的な技術を提供するという当社のコミットメントを強調するもの」としている。

 発表会見で説明があったz13の詳しい内容については関連記事を参照いただくとして、ここでは「これから本格的に訪れるクラウド時代にあってもメインフレームは生き続けるか」という視点でz13を見てみたい。

武藤和博氏
日本IBM 武藤和博 常務執行役員システム製品事業本部長

 日本IBMの武藤和博 常務執行役員システム製品事業本部長は発表会見で、「メインフレームというとレガシーな印象を持たれてしまいがちだが、全く新しいオープンなシステムに進化している。その最新製品であるz13には、クラウドやビッグデータにも対応した機能をふんだんに盛り込んでいる」と強調した。

 同社の説明によると、「高い可用性とセキュリティという伝統的なメインフレームの能力を有するz13は、理想的なプライベートクラウドおよびハイブリッドクラウドのアーキテクチャだ」という。その象徴的な機能として、最大8000(1コアあたり50以上)の仮想サーバを稼働させることができ、ソフトウェアや電力、設備のコストを抑えられるとしている。

 さらに、クラウドの構築コストも低減。IBMによる内部試験では、z13を使用したクラウドはx86サーバを使用したクラウドに比べて32%、パブリッククラウドとの比較においては3年間で60%のTCO(総所有コスト)削減を図ることができるとしている、また、LinuxやOpenStackなどのオープンな標準技術にも対応しており、「オープンなプラットフォーム」であることを強調している。

パブリッククラウドのプラットフォームになり得るか

 もともと頑強なメインフレームにこれだけのクラウド対応機能が加われば、ハイブリッド利用を含めたプライベートクラウドのプラットフォームとして、IBMのメインフレームを利用しているユーザーには魅力的な製品だろう。クラウドに対する信頼性や安全性へのニーズが高まっている中、メインフレームを使用したプライベートクラウドの需要は、既存ユーザーだけでなく新規ユーザーにもそれなりの訴求力がありそうだ。

 ただ、今後の課題となり得るのは、パブリッククラウドの利用が主流になってきたときに果たしてメインフレームが生き続けるかどうかだ。これはプライベートクラウドの今後の需要動向とも密接に関係してくるが、「5年先にはクラウドといえばパブリッククラウドが主流になる」との筆者の見立てに基づいている。

 果たしてパブリッククラウドサービスベンダーで「進化したメインフレーム」を採用するところが現れるか。そしてサービスにおける競争力を発揮することができるか。さしずめ、IBMそのものが自らのパブリッククラウドサービス「SoftLayer」でメインフレームの価値を実証してみせることも効果的かもしれない。

 プライベートクラウドのプラットフォームとしてのメインフレームは、既存ユーザーを中心に今後も一定の割合で使用されるだろう。ただ、それでは「市場の縮小傾向」は変わらないのでないか。パブリッククラウド時代にメインフレームが価値のある製品として生き続けるか、今後の動きに注目しておきたい。

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