Dellが米テキサス州オースティンで開催した年次イベント「Dell World 2014」は、ソリューションベンダーとしてのDellの取り組みを披露する場となった。非公開企業となって1年、Dellの開発ペースは速くなり、ソフトウェアとハードウェアの統合も進みつつあるようだ。会期中、アジア太平洋日本(APJ)担当プレジデントを務めるAmit Midha氏がグループ取材に応じ、新製品や戦略を語った。
ビジネスのすべてが常に変化していて予測が難しい
――新たに発表したコンバージドインフラ「Dell PowerEdge FX」などを“Future Ready IT”と表現している。Future Ready ITの意味を教えてほしい。
レガシーアプリケーションが独占していた時代から、アプリケーションの運用が変わりつつある。将来は不確実性が増えており、スマートフォンやタブレットなどのモバイルのトレンドに代表されるように、顧客の行動が急ピッチで変わっている。デマンドのパターン、サプライチェーンとビジネスのあらゆる面で変化しており、予測が難しい。この状態は今後も続くだろう。
これを受けてインフラに求められる要件も変化しており、アジリティが必要。市場の変化、ビジネスの変化、そして顧客の行動の変化が変わると、需要パターンが変わり、サプライチェーンも変わる。ビジネスのすべてが常に変化している時代で予測が難しい。変化に柔軟に、迅速に対応できるインフラが求められている。
例えば、日本のある電力会社は55台のメインフレームを動かしているが、香港の別の企業は同規模のシステムを2台のラックで運用している。この違いが何を意味するのかを考える必要がある。
アジリティを実現するのがソフトウェア定義、ソフトウェアベースのアーキテクチャだ。これを一元的に管理する必要がある。柔軟性、アジリティに加え、選択肢も必要だ。Dellならば、これらを実現する上でコスト削減のメリットも得られる。
――Dell Researchが「High Velocity Cloud」を発表した。オースティンのような中規模都市のモバイルトラフィックをサポートできるとしている。
標準のサーバを最適化して、高速なパケット処理を可能にするもので、仮想化された標準サーバがネットワーク主導の機能を処理する能力を20倍改善する。デモではDell R920サーバと標準のネットワークアダプタの組み合わせを利用した。214Gbpsをサポートし、CPUの90%をネットワークワークロードに割り当てることができた。まだベータ段階であり、2015年中頃に本格稼働となると予想している。
――各種のクラウドサービスを比較、購入、管理ができる「Dell Cloud Marketplace」のベータ版を発表した。Amazon(AWS)、Google(Google Cloud Platform)などが参加しているが、参加企業はどのようにして選んだのか?
AmazonとGoogleはこの分野で規模が大きいことから選んだ。このほか、以前から提携関係にあり環境の統合が進んでいるJoyent、それにDockerなどがあり、合計で約20種類のクラウドをサポートする。このうちの3種類については再販提携を結んでいる。対応するクラウドは今後も増やしていきたい。
――日本を含むアジア市場をどうみているか。ここでの戦略は?
APJ市場は非公開化の前はDellの売り上げの25%を占めていた。日本、中国、オーストラリアなどでは先進的な事例も多く、重要な地域だ。中でもチャネル戦略が成功しており、チャネルでは世界的に見てもリードしている。
日本市場は第1四半期、第2四半期が好調だったが、第3四半期は成長がやや鈍化した。今後、成長をしっかりとナビゲートしていく。
われわれの戦略は、既存の顧客を維持しつつ、新規顧客の獲得を進めるというものだ。チャネル戦略はここで重要となる。非公開企業となって長期的戦略に基づいて進めることができるようになった。長期的戦略で進めると、短期的に何をすればよいのかもみえてくる。
Dellは売り上げの2%程度を新規ソリューション開発に投資しており、今後も投資を継続していく。魅力的な製品があり、強いビジョンがあり、顧客はこれを受け入れてくれている。Future Ready ITも理論だけでなく、実際に顧客が購入して運用している。