Dellは伝統的にハードウェア企業として知られているが、実はソフトウェア市場での地位も着々と確立してきた。そうした中、同社はクラウドサービス関連商品の拡充を推し進めるべく、Dell World 2014でDell Cloud Marketplaceのパブリックベータプログラムの開始と、クラウドサービス仲介市場への参入を発表した。Cloud Marketplaceはオンラインのサービスプラットフォームであり、顧客はCloud Marketplace上で各種クラウドサービスの検討、購入、調達、精算を完結できようになる。
Dell Cloud Marketplaceの最高技術責任者(CTO)であるJames Thomason氏は米ZDNetの取材に対し、Cloud Marketplaceは、企業のIT部門が直面するクラウドサービスのガバナンスに関する課題の解消を目的としていると語った。
同氏は次のように述べている。「現在、企業で利用されているクラウドサービスの90%以上はIT部門の正式な承認を受けておらず、IT部門はそれらのサービスを正しく監視できていない。社内の各所でさまざまなクラウドサービスが利用される中、IT部門はそれらサービスの全体像を把握できず、社内システムへのアクセスで問題が起きているかどうか確認することもできない。その一方で、それらサービスの経費を場当たり的にIT関連予算で補填する作業に追われ、長期的なIT予算の見通しを立てることができずにいる」
Dellは最初にAmazon、Google、Joyent、Docker、Delphix、Pertinoと提携し、複数のクラウドサービスを組み合わせたエコシステムを構築してきたが、Thomason氏によると、今後数週間でさらに多くの企業との提携を発表する予定だという。
Delphixのマーケティング担当副社長であるRick Caccia氏は、単一のクラウドサービスに縛られない柔軟性を求める企業にとって、Cloud Marketplaceは魅力的な選択肢になるとしたうえで、「クラウドは単一の存在として語られがちだが、実態は複数サービスの集合体である。そのため、データセンターで運用していたアプリケーションやデータを複数のクラウドサービスに移行しようとする顧客は、相当な困難に直面する」と述べた。同氏によると、Delphixがデータを複数のクラウドサービスに移行して管理するためのソリューションを担当する一方、DellがIT業務全体を移行して管理するためのソリューションを担当することで、顧客に真の価値を提供できるという。
Cloud Marketplaceの構築には、Dellが2013年に買収したEnstratiusのノウハウが活用されている。クラウド戦略を加速するためにDellがさらに他の企業を買収する可能性について、Thomason氏は「当社は必要と判断した投資は行っていく。しかしCloud Marketplaceは内部的に開発を進めており、当社にとって買収はクラウド戦略における唯一の選択肢ではない」と述べている。
Thomason氏によると、多くの企業がクラウドサービスを必要としている今日、Dellは市場において真に中立的で信頼できるアドバイザーとしての地位を確立したいと考えているという。なお、Dellは過去にVMwareと提携してパブリッククラウド市場に参入したものの、2年後に提携を解消し、パートナー経由でサービスを販売する戦略に転換した経緯があるが、これについてThomason氏は「戦略的によい結果につながった」と述べた。また、同氏は「クラウド市場に参入している企業の大半は、経験のない分野でエキスパートしての自己を確立しようと格闘するか、顧客を自身の製品群に囲い込もうとしている。Dellはそのどちらでもなく、その事実は戦略的に非常に大きいアドバンテージになる」と語った。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。