日本IBMは8月5日、モバイルアプリケーションの開発・運用基盤ソフト「IBM MobileFirst Platform」について説明会を開き、情報をアップデートした。機能強化点として、データベース接続方法の拡充を図ったほか、位置情報を用いた行動解析を可能にした。また、ライセンス体系もデバイス単位へと変更し、小規模企業でも導入しやすくした。
MobileFirst Platformは、モバイル端末向けアプリケーションの開発や運用に必要なミドルウエア群を標準化、体系化したプラットフォーム製品(図1)。iOSやAndroid、Windowsなどの異なるデバイス間でソースコードなどの開発資産を共有できるほか、並行開発している複数のアプリケーション間で開発手順や開発資産を共有できる。

図1:MobileFirst Platformの概要とソフトウェア構成

写真1:日本IBM クラウド事業統括担当執行役員 小池裕幸氏
「2017年、顧客に接する社員が使うアプリケーションは100%モバイルアプリケーションになる。これらのほとんどは基幹システムとつながっている」――。モバイル開発環境をプラットフォーム化する背景について、日本IBMで執行役員クラウド事業統括担当を務める小池裕幸氏(写真1)はこう説明する。「基幹システムとの接続機能をアプリケーションごとに作っていたら効率が悪い。開発に専念するためには、開発・運用環境のプラットフォーム化が必要だ」(小池氏)
基幹システムとの連携やクラウド型NoSQLへの接続を強化
バックエンドシステムと連携しやすいように、今回データベース接続機能を強化した(図2)。モバイルアプリケーションから基幹システムのデータベースに接続しやすいように、JSON形式でデータを問い合わせ、取得できるツール群や開発環境を整えた。同社が運営しているクラウド型のNoSQLデータベースサービス「Cloudant」も利用できるようにした。ネットワークにつながっていない時にデータを端末側で保持し、オンラインになった時にサーバ側と同期する仕組みも用意した。

図2:データベース接続機能を強化。基幹システムにJSONでアクセスする手段を用意したほか、クラウド型NoSQLにアクセスできるようにした
今回強化したもう1つのポイントは、位置情報を利用した行動解析だ。行動に応じてパーソナライズされたサービスを顧客に提供しやすくなった。Beaconセンサなどを使うことで屋外だけでなくGPSが使えない屋内でも位置情報を取得できる。多数のセンサを店舗などに配置することでモバイル端末利用者の行動を解析できるようになる。
今回、ライセンス体系も変更した。もともと開発ツールの利用料は無償であり、アプリケーションの実行時にライセンスが必要になっていた。以前は、開発したアプリケーション単位でまとまった金額が必要になっていた。今回これを改め、アプリケーション利用者ごと(アプリケーションを導入するデバイス単位)で課金する形態とした。税別の参考価格は135万円(200デバイス)からと、小規模企業でも導入できるようにした。
発表会では、MobileFirst Platformを活用して開発したモバイルアプリケーションの事例として、セイコーエプソンのゴルフスイング解析アプリケーション「M-Tracer For Golf」について紹介した。セイコーエプソンによると、MobileFirst PlatformによってiOSとAndroidの2つの異なるデバイス向けに開発資産を共通化できた。これにより、納期(生産性)を従来比で3割短縮した。発表会では、実際にM-Tracer For Golfのデモを見せた(写真2)。

写真2:モバイルアプリケーション事例の1つ、セイコーエプソンのゴルフスイング解析アプリケーション「M-Tracer For Golf」のデモンストレーションの様子