人間工学などの科学を加味--日本IBM、モバイルアプリ起点のビジネスを支援

三浦優子 2015年03月25日 11時09分

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 日本IBMは、モバイルアプリを起点としたビジネス戦略「IBMインタラクティブエクスペリエンス事業」を報道関係者に公開した。(1)顧客一人ひとりの体験をデザインする「体験をデザインする」、(2)顧客に体験の素晴らしさを伝える「つながる」、(3)いつでもどこでも顧客に取引を提供する「取引する」、(4)膨大なデータから新たな発見を導き出す「洞察し、発見する」――という4つのサイクルによって顧客体験を向上させ続けるプラットフォームが重要になると位置付ける。

 「ペルソナ、カスタマージャーニーマップの作成は他社でも行っているところはあるが、戦略コンサルタント、人間工学の専門家、グラフィックデザイナー、数理学者といった多彩なメンバーで体験をデザインする。特に企業に変革が必要になる部分をロードマップとともに提案する変革プロジェクトマネージャーがいることが他社にない大きな特徴」(日本IBM パートナー インタラクティブエクスペリエンス事業担当 工藤晶氏)

Cameron Art氏
日本IBM 取締役専務執行役員 グローバル・ビジネス・サービス事業本部長 Cameron Art氏
工藤晶氏
日本IBM パートナー インタラクティブエクスペリエンス事業担当 工藤晶氏

 顧客との取引を担うメインはモバイルアプリになるとしており、「IBMではモバイルアプリが今後さらに重要なものとなっていくと認識している。インタラクティブエクスペリエンスでは、シンプルで美しく、機能的なモバイルアプリを構築するためのお手伝いを全方位で展開する」(日本IBM 取締役専務執行役員 グローバル・ビジネス・サービス事業本部長 Cameron Art氏)と説明している。

科学視点でのデザインが重要

 IBMインタラクティブエクスペリエンス事業は、IBMのデジタルエージェンシーだったIBMインタラクティブとモバイル部門を統合して発足した。

 顧客体験を向上させるプラットフォームの4つのサイクルには、(1)ジャーニーマップ、モバイルキャンプ、クリエイティブ&デザイン、(2)オムニチャネル変革、デジタルマーケティング、モバイル体験、(3)e/mコマース、マーケティングオートメーション、パーソナライゼーション、(4)カスタマーアナリティクス、ソーシャルアナリティクス、デジタル体験の見える化――という要素やソフトウェアが用意されている。

 この戦略で成功した事例として、パナソニックを挙げた。パナソニックは各国ごとに制作されていたウェブを統合。「ヨーロッパのように体制がしっかりした地域はともかく、アジアなど新興国ではコンテンツを制作する環境が十分ではなかった。グローバルにウェブを統合し、最新コンテンツを新興国でも迅速に提供できる環境が整った結果、ウェブサイトの閲覧者数20%増、滞在時間38%増、離脱率17%減という結果となった」(工藤氏)

 自動車メーカーのJaguarは、タブレットで操作するバーチャルショールームを開発。このシステムをディーラーに置くことで、本物の車を置かずに新車を体験し、オプションで選択する部分をシステムから選択するといった体験ができる。顧客がどのようにシステムを利用したのかについてはデータを取り、顧客がその車のどこに興味を持ったのかといったデータとして活用していく。

 デジタルマーケティング関連ではクレジットカード会社の事例を挙げた。あるクレジットカード会社は、顧客の興味に対応した情報、ウェブサイト、メールなどを通じ顧客にあわせたマーケティングを行う基盤に再構築したところ、利用額が前年同期比15%上昇したと説明する。観光地のウェブサイトをパーソナライズし、マーケティングを自動化させるデジタルマーケティングのためのプラットフォームを再構築したところ、メールアドレス取得数が10倍以上になるなどの事例が生まれている。

 カスタマーアナリティクスの事例では、「ビッグデータのアナリティクスはよく話題にのぼっているが、最初からうまくいくわけではない。まず仮説を立て、そこから発見、施策を実施し、その結果をさらに分析するというサイクルが必要になる。それを具体化した事例として、カー用品製造業のキャンペーンマーケティング施策、製薬会社の公共医療データとMR(医療情報担当者)が集めた内部データとの統計解析による医者のセグメンテーションなどの事例が生まれている」(工藤氏)とこちらもさまざまな業種の例が出ている。

 三井住友海上あいおい生命保険では、モバイルサイトのデザイン変更を日本IBMが担当したが、「単に見栄えの良いレイアウトを作成する会社はたくさんあるが、IBMでは導線設計、人間工学といった科学的視点で提案する体制となっている。この“見た目+科学視点”という点が大きな評価を頂いた」(工藤氏)と他社にない提案が評価のポイントとなったと説明した。

 IBMとAppleの提携で誕生したモバイルアプリ「IBM MobileFirst for iOS」7種類の日本語化が完了。日本での提供も開始されている。

 「こうしたアプリ開発は表面的なことで、本当のポイントはその水面下にある部分。迅速なテストやリリース管理、セキュリティ検査、保守運用、基幹システムやアナリティクスとの統合といった部分を当社が一括してサポートすることで、企業がモバイルアプリを利用しやすくなる環境整備を行っていく」(工藤氏)

 特に日本企業は、欧米に比べ“私物端末の業務利用(BYOD)”の導入が遅れていることもあってモバイルアプリ活用はこれから増加するとみられている。

 「スタートの際、小さく始めることが重要。社内には新しいもの好きで新しいことをやりたい人材がいる。これを見つけ、まずプロトタイプを作って成功体験を作ることで、社内にモバイルアプリを使う土壌を作る。保守運用といった面倒な部分は、IBM側で提供する準備も進めており、企業のモバイル活用本格化に向けて支援していきたい」という。

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