2011年以降、中国のハッカー集団によるものと思われる大規模なサイバー攻撃が、インドと東南アジア諸国に対して集中的に仕掛けられていることが、セキュリティ企業FireEyeの調査で明らかとなった。
このサイバー攻撃は「Advanced Persistent Threat(APT)」と呼ばれる中国発の継続的な標的型攻撃の一部とみられているが、これまでに判明しているだけでも、インドと東南アジア諸国の100を超える標的に攻撃が仕掛けられ、標的の70%はインドに集中していた。これらの攻撃のうち何件が成功したのかについては、FireEyeでも特定できていないという。
このハッカー集団は、Microsoft Word文書を添付したフィッシングメールで標的型攻撃(スピアフィッシング)を仕掛ける。このWord文書には「Watermain」と呼ばれるスクリプトが仕掛けられており、標的のシステムに感染すると侵入用のバックドアを作成する。
ハッカー集団の主な目的は、国境問題など外交政策に関する機密情報の窃取だとみられており、インドのNarendra Modi首相が初訪中する1カ月前の2015年4月にも同様の攻撃が検出されていた。インドではこれ以外にも、航空宇宙産業や防衛産業などが標的となっているという。なお、Watermainは東南アジア諸国の政府機関、教育機関、科学技術産業、およびチベットの活動家などに対するサイバー攻撃でも用いられている。
FireEyeの分析では、ハッカー集団は類似の攻撃ツールを10年以上も使い回すなど、それほど高度な攻撃手法は用いておらず、現在のサイバー攻撃も2012年当時の脆弱性に依存している。しかし、システムのセキュリティ更新を疎かにし、既知の脆弱性を放置したままシステムを運用している企業や組織は、こうした過去の脆弱性を悪用した侵入を簡単に許してしまう。
FireEyeによると、この種の標的型攻撃から組織を保護して機密情報の漏えいを防ぐには、システムを常に最新の状態に保つと同時に、セキュリティに関する最新の技術、専門技能、知見を組み合わせて日頃から攻撃に備え、即応体制を整えておくことが不可欠である。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。