中国ビジネス四方山話

中国人訪日観光、特徴は「爆買い」だけじゃない--急増する「子連れ」旅行

山谷剛史 2015年07月28日 06時00分

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 中国の学生の夏休みは、日本のそれよりも少し長く、7月初旬から8月末まで2カ月弱ある。日本の空港や、中国人に定番の日本の観光地やショップでは、大人にまじって学生や入学前の子供を目にすることも多くなる。中国人の訪日観光客と言えば、「爆買い」ばかりが注目されるが、中国で人気の芸能人が子供と旅行先で暮らす「パパどこいくの?」というテレビ番組がヒットしたこともあり、子供にリアルな外国を体験させたい、視野を広げさせたいとして親子旅行に対するニーズが高まっている。

 中国を代表する旅行予約サイトの1つ「同程旅遊」の調査によれば、今夏の子連れ旅行(中国語で「親子遊」)で行きたい国や地域のナンバー1は日本。2位以下10位までは香港、タイ、韓国、シンガポール、ニュージーランド、カナダ、台湾、オーストラリア、ロサンゼルスと続く。日本の魅力として、「円安で良い商品がお買い得」「清潔」という定番の他に、東京を拠点にすればディズニーランド、大阪を拠点にすればユニバーサル・スタジオ・ジャパンなどの様々なアミューズメントスポットが揃い、平均所得が高めの沿岸部からは2~3時間で行けるという近さが挙げられている。小学校高学年以上の子供がいれば、日本のアニメやゲーム、ライトノベルで見聞きする日本をリアルに見て、現地でグッズを買い漁りたいというニーズも、日本行きの理由に加わる。

 同程旅遊がサイトユーザーを対象に、春休みや5月1日からの連休「労働節」を前に行った調査のレポート「2015年春季親子旅需求報告」によると、子連れ旅行に行きたい人の70.1%が中国国内の近場旅行を行き先に挙げているが、残る3割のうちの半分に相当する15.6%が海外、14.2%が中国国内の遠方地域と回答していた。子供のことを重視するからこそ、土産屋と観光地を急ぎ足でまわる低価格ツアーは選ばれず、客単価が高い傾向も見られた。小さな子供を持つ親にはネット使いこなし世代「80后(1980年代生まれ)」や「70后(1970年代生まれ)」が多いので、同程旅遊の予約のうち8割がスマートフォンやタブレットなどのアプリから旅行を予約する。またホテルと1日フリー交通チケット、入場券をセットにした予約へのニーズが高まっているという。

 子連れ旅行のニーズが高まる中、中国各都市の観光課やテーマパーク、動物園などは、子連れ旅行客の呼び込みに余念がない。子供に受けるペンギン展やアルパカ展を用意したり、中国で根強い人気の子供向け中国産アニメ「喜羊羊与灰太狼」の模型展を用意したりして、そういったところはやはり人気だ。

 日本に子連れで旅行する人が増えれば、やがてそれが口コミで広がり、さらに多くの子連れ中国人旅行客がやってくるだろうと予想できる。爆買い旅行客とは異なる体験で日本を知る人が増えていくわけだ。この子供を柱とした中国人旅行客に、日本側はどれだけ対策をしているだろうか。

 彼らは中国のネットサービスやアプリを使いこなしても、中国国内で遮断されたGoogleなどのサービスには慣れていないしアプリもインストールしていない。なので、子連れに限らず、中国旅行客向けの観光情報やお買い得なチケット、宿泊プランは、告知方法を工夫する必要がある。また中国の観光地で子供向けの特別展を出して客寄せしているように、日本の観光地でも外国人にもわかる子供向けのイベントを用意して、サイトで中国語や外国語の情報を公開し、客寄せする必要がありそうだ。また日本のキャラクターは人気なのだから、中国人観光客を呼び込みたいところは、中国で人気のキャラクターのコラボイベントをやると効果があるだろう。

 中国人は子供に甘い。たとえば空港などの大規模施設で走り回ったり寝転んだりしている子供に寛容だし、トイレ以外の場所で用を足すことも問題ないと思っている。子供くらい、縛らず自由にさせていいじゃないかという考えが根底にある。中国では日本と比べて子供向けの遊び場が少ないことも、子供がどこでも自由に遊びまわることに拍車をかけている。だがそれが日本の特定の観光地で目立つようなら、日本人観光客の間でその観光地の評価が下がる。中国人の家族連れを呼び込みたい日本の観光地は、子供が遊べるところを用意し、かつ園内の外国人にもわかるように明示する必要がある。

 子連れ訪日旅行のニーズは今後も増え続けるだろう。中国ではリアルでもネットでも口コミの影響力が大きい。特に育児に関するママ友同士の情報はより緊密だというのは、中国全土で口コミで広がったベネッセの中国版「こどもちゃれんじ」でも実証されている。高評価で帰国してもらえれば、彼らは口コミで情報を広げるし、リピーターとして来るだろう。だからこそ、爆買い対策だけでなく、子供に楽しい日本の対策も重要だと筆者は考えている。

山谷剛史(やまやたけし)
フリーランスライター
2002年より中国雲南省昆明市を拠点に活動。中国、インド、アセアンのITや消費トレンドをIT系メディア・経済系メディア・トレンド誌などに執筆。メディア出演、講演も行う。著書に「日本人が知らない中国ネットトレンド2014 」「新しい中国人 ネットで団結する若者たち 」など。

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