MSなど6社、うつ病などの重症度評価に機械学習を活用--端末を開発

NO BUDGET 2015年08月26日 13時16分

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 ソフトバンクや日本マイクロソフトなど6社は8月25日、学校法人の慶應義塾と協力し、国立研究開発法人の日本医療研究開発機構(AMED)の医療機器・システム研究開発事業「ICTを活用した診療支援技術研究開発プロジェクト」の2015年度の委託先として採択されたと発表した。機械学習の機能をクラウドから提供する「Microsoft Azure Machine Learning(ML)」を活用した、診療支援技術研究開発プロジェクトを10月から開始する。

 プロジェクトは、データの関連や規則性から処理の方法などを自動的に学習して、判断させる機械学習の仕組みを活用。これまで定量化できていなかった患者の思考、表情、発言内容を可視化し、臨床評価や治療に活用するという。

 精神科領域での患者症状の重症度評価は、患者の自覚症状や評価者の観察に基づいており、客観性に乏しいことから日常臨床での治療導入の決定や治療効果判定、新薬開発のための治験の大きな障壁とされている。

 慶應義塾大学 医学部精神・神経科学教室 専任講師である岸本泰士郎氏の研究チームは、気分や集中力、倦怠感といった患者の主観的体験、他者が観察可能な気分の表出、動作速度など病状の中心となる症状を定量化するために表情や瞬目モニタリングでの客観的なうつ病、躁うつ病症状の評価研究に取り組んできた。

 研究では、これをさらに発展させ、診療時の表情や音声、体動などのデータをデバイス内で一次解析し、クラウドに転送、重症度評価のアルゴリズムとつきあわせて症状を客観的に評価し、リアルタイムで診察室に結果を提示する診療支援デバイスを開発する。

デバイスの活用イメージ
デバイスの活用イメージ(日本マイクロソフト提供)

 スマートフォンなどをプラットフォームとして過去数週間の生活活動データをクラウドで入手し診察室でのデータと融合、解析を補完する。得られたデータは、Azure MLで各疾患の評価尺度との相関が高くなる最適なアルゴリズムを探索、構築していく。

 デバイスの開発で客観的評価尺度が利用できるようになれば、医師の経験や感覚に頼っていた重症度や治療効果の判定に客観性を持たせられ、治療の選択が科学的根拠に基づけるようになるという。客観的指標が普及することで治療実績を容易に評価、比較でき、国家レベルの施策がしやすくなる。治験では、バイアスの大きい評価に依存しなくてもよくなり、治験の失敗を防ぐことにつながるとメリットを説明している。概要は以下の通り。

研究開発代表慶應義塾
事業課担当UBIC MEDICAL:事業化と事業化後の販売を担う。
研究では、独自開発の人工知能技術を駆使したテキスト分析で語彙数や指示語、感情語、文章構造に重点を置いた解析でテキストにあらわれた患者の思考や表現を定量化する
共同研究開発アドバンスト・メディア、システムフレンド、セムコ・テクノ、ソフトバンク、日本マイクロソフト
研究開発期間2015年10月~2019年3月
各法人での研究内容 アドバンスト・メディア:精神科領域専用辞書を作成し、音声認識技術AmiVoiceでテキスト化する
システムフレンド:赤外線を使ったモーションセンシング技術で診察室入室から退室までの体動を記録し動作速度や落ち着きのなさを定量化する
セムコ・テクノ:システムフレンドとセムコ・テクノの共同作業で、精神症状の定量化のために最適化された各種センサ、解析機能、結果表示モニタといった機能を搭載したデバイスを開発する
ソフトバンク:被検者から睡眠や活動量、会話などの日常生活活動について、スマートフォンなどでデータを収集する
日本マイクロソフト:得られたデータをセキュアに保管、機械学習のAPIを提供し、データ解析を実行するプラットフォームを提供。全体のシステムを設計する
慶應義塾:上述の技術で得られた解析結果と、一般的に使われる臨床症状評価をつきあわせて、重症度評価のアルゴリズムを作成する。表情解析はオムロンとの表情認識技術を使った共同研究の取り組みとして実施する

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