日本オラクルは8月26日、記者説明会を開催し、マーケティングや営業、人事などを含めたクラウド全体の中で、統合基幹業務システム(ERP)やサプライチェーンマネジメント(SCM)を中心としたクラウド事業戦略を発表した。海外展開を視野に入れる中堅中小企業に焦点を当て、パートナーとの協業や人材採用の積極化といった施策を交えて、アプリケーション分野でのクラウド事業拡大を図る。
常務執行役員で、クラウド・アプリケーション事業統括ERP/ERMクラウド統括本部長を務める桐生卓氏
常務執行役員で、クラウド・アプリケーション事業統括ERP/ERMクラウド統括本部長を務める桐生卓氏は「2020年までに中堅中小企業からの輸出額を2010年比で2倍にする」との政府の目標を引用し、国が海外進出を積極的に支援していると指摘する。
だが、実際に海外進出をしてみると、現地の活動が見えずに迅速な対応ができない、商習慣や法制度への対応に苦労する、拠点ごとにプロセスが異なり無駄が発生するといった課題に直面するという。事業継続計画(BCP)対策、複数拠点対応、業務プロセスの標準化、データ保全とセキュリティの確保なども求められる。
クラウド型のERP「Oracle ERP Cloud」を導入することで、解決できるというのが同社の主張。短期間で利用を開始し、必要な分に応じた契約ができること、システム運用メンバーを自社で抱えなくていいといった利点があることを要因として挙げた。
最近の傾向として、本社側がコアとなるオンプレミス型のERPを導入し、海外拠点側にコアERPと連携する別のアプリケーションを導入する「2層モデル」の導入形式が広まっているという。だが、コアERPを中心にした上で、海外拠点側のアプリケーションとして会計、販売、人事管理といった機能ごとのSaaSを導入してしまい、結果として、機能間でデータがつながらず、バラバラなシステム構成になるケースが増えているとのこと。
ここでOracle ERP Cloudでは、会計、購買、プロジェクト管理、在庫、人事といった幅広い機能を持つ総合的なSaaSを、単一データモデルで利用できるため、業務間でデータが分散することなく、相互に連携しながら活用できるとしている。
導入イメージとして、大企業向けには、オンプレミスのコアERPと海外拠点用のOracle ERP Cloudを組み合わせ、使い分ける方法を挙げる。一方で、中堅企業などで、長年にわたる投資で構築した大規模な既存システムを持たないような場合は、Oracle ERP Cloudを自社のコアERPとして導入するのも有効だとしている。
この日は、クラウド形式で製造業での製品開発業務などを支援する新サービス「Oracle Innovation Management Cloud」を発表した。新製品開発などの属人化を防ぎ、情報を一元管理することで、プロジェクトメンバーが最新の単一マスターデータを共有し、迅速な意志決定ができるようにする。
新サービス「Oracle Innovation Management Cloud」のイメージ
製造業のコアとなるような仕組みをクラウドで提供することにより、今後さらに、企業のコア業務にクラウドを導入する企業が増えるという方向性を示した。