自分に前向きに--日本IBMのインターンシップに見る多様性という“幸福”

大河原克行 2015年09月12日 08時00分

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 日本IBMが日本独自に展開している、障がいがある学生向けのインターンシップ制度「Access Blue」の報告会が9月10日に日本IBM本社で開催された。

 Access Blueは、障がいがある学生を対象に学業と就職活動を両立させながら、ITスキルや英語力、グローバルのリーダーシップを身につけてもらうインターンシッププログラム。2014年に12人の障がいがある学生を対象に3週間のパイロットプログラムを実施。その実績をもとに、今年3月から24人が参加、6月からは8人が参加し、それぞれ半年間のインターンシップを行っている。

 日本IBM 人事ダイバーシティ&人事広報部長の梅田恵氏は「障がいがあるために自分の仕事は事務作業しかないと思いこんでしまう場合が多い。また健常者に比べてアルバイト経験が少なく、企業で働くというイメージが涌きにくい、あるいは経験がないために面接などで自信が持てないという場合も多々みられている」と解説した。

 「インターンシップを通じて、仕事を経験することで、就職の際にも自信を持てるような効果を狙っている。IT業界は3K職場という認識が強く、障がい者が就労を避けがちになっているという状況も打開したい」(梅田氏)

 インターンシッププログラムでは、コミュニケーションやコラボレーションのスキル習得、ビジネス文書やプレゼンテーション能力の習得、交渉術や面談力の向上、ITの最新動向に関する基礎知識の習得、Javaの基礎知識とプログラミングスキルの習得、クラウドベースのアプリ構築と業務実行、IBMが持つ最新技術とアクセシビリティ技術の学習などが含まれる。

梅田恵氏
日本IBM 人事ダイバーシティ&人事広報部長 梅田恵氏

 梅田氏は「単一の仕事だけにとどまらないこと、学業と両立しながら実施するという点にこだわった。大阪や奈良からの参加者もあり、春休みや夏休みに出社して仕事して、それ以外の期間は在宅勤務という仕組みも採用している」とAccess Blueの工夫を説明した。

共同作業で自らに前向きに

 3月からAccess Blueに参加した学生たちはPaaS「Bluemix」を活用したプログラミングコンテスト「IBM Bluemix Challenge 2015」に挑戦。今回の報告会は、その成果を発表する場ともなった。

 学生たちは3チームに分かれて、社会的課題を解決するアプリの開発に挑戦。今回のBluemix Challengeには、全国から547件の一般応募があり、結果的には残念ながら入賞できなかったが、「障がい者ならではの視点で問題を解決していくアプリ開発は注目に値するものだった」(梅田氏)

 コグニティブコンピューティング「Watson」を利用して人間の感情を分析し、3タイプのアルゴリズムに基づき、お勧めの音楽を選曲する「Blue-Mixer」は精神を安定させるという点でも効果を発揮するものだ。Googleマップ上で自分のタスクなどのコメントを入れて情報を保存、共有する「Label Mapper」は、車いすで移動する際に利用したり、視覚障がい者が移動する際に事前に情報を収集したりといった点でも活用できるアプリだ。そして、車いす利用者の電車移動をスマートにするための予約システム「Smart Ride」は、駅員による支援を事前に予約することで、大きな駅でも待ち時間を少なくして乗り換えられるようになるなど車いす利用者ならではの視点で開発したものとなった。

 「自分の枠の中に籠もってしまう障がい者が多い中で、チームで開発に取り組むことで共同作業を通じてコミュニケーションが活発になったり、ほかの障がい者を補完したりすることで自らの障がいを前向きに捉えるといった効果があった」(梅田氏)

 報告会では日本IBM副会長の橋本孝之氏が挨拶。「ダイバーシティでチャレンジしなければならないのは個性の違い、障がいの違いを頭で理解するインテレクチャル(Intellectual)、心理的なバリアを乗り越えるサイコロジカル(Psychological)、違いを理解し、新しいものを創造していくソーシャル(Social)の“IPS”である。半年前のキックオフでは不安そうな顔だったが、今日は胸を張って別人のようにみえる。そして、このIPSを実践し、ダイバーシティを企業の価値として生かしていけることを皆さんが証明した」と語った。

 「修了を迎えた皆さんにイギリスの生物学者のThomas Huxleyの言葉を贈りたい。『Try to learn something about everything and everything about something』。これは“あらゆることについて何かを学び、何かについてあらゆることを学ぼうと努めよ”という意味。今回のインターンシップを通じて、ITについて学んでもらい、自己変革のきっかけになったのではないだろうか。これからITを極めてもらうといったことにも挑戦してほしい。また、障がいを個性として本人や企業の価値に結びつけていってほしい」(橋本氏)

 日本IBMは、2013年に設立した一般社団法人企業アクセシビリティ・コンソーシアム(ACE)にも加盟。橋本氏が代表理事を務めている。「日本IBMでは、今後もAccess Blueの活動を継続していきたいと考えている。今回の成果をACEと共有し、ACE会員企業を巻き込んだ活動へと発展させていきたい」(梅田氏)

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