5年間で4万人のエンジニアが必要--IT分野の新業界団体「日本IT団体連盟」発足

大河原克行

2015-10-09 19:02

 一般社団法人日本IT団体連盟(ITrenmei、Japan Federation of IT Associations)が発足することが発表された。千葉市の幕張メッセで開催中の「CEATEC JAPAN 2015」の会期3日目となる10月9日に開かれたパネルディスカッション「明日のIT政策とソフトウェア産業を考える~IT関連団体の役割と共通の課題~」で明らかにされた。

 パネルディスカッションには、日本IT団体連盟の呼びかけ役となった一般社団法人コンピュータソフトウェア協会(CSAJ)会長の荻原紀男氏(豆蔵ホールディングス代表取締役社長)のほか、設立準備に関わった一般社団法人全国地域情報産業団体連合会(ANIA)会長の長谷川亘氏(一般社団法人京都府情報産業協会会長)、全国ソフトウェア協同組合連合会(JASPA)会長の中島洋氏(MM総研代表取締役所長)、特定非営利活動法人(NPO)日本情報技術取引所(JIET)理事長の酒井雅美氏(バリューソフトウエア代表取締役社長)が登壇した。

パネルディスカッションの様子
パネルディスカッションの様子

 日本IT団体連盟の設立目的として、「IT関連団体の連合体として、日本のIT産業の健全な発展に貢献するとともに、世界最高水準のIT社会の構築を目指すため、政府との双方向のコミュニケーションを実現しながら積極的に提言などを行い,日本の経済、社会、国民生活の向上に寄与する」ことを掲げた。

 具体的な活動として、「ITに関する事項の政府、関係機関等に対する意見表明および具申」「“サイバーディフェンスリーグ”構築支援および人材育成」「ITに関係する機関などとの連携および情報交流」「IT教育推進に関する諸活動」「海外IT関連団体との連携」などを挙げている。10月から発起に向けて賛同する団体の募集を開始。2015年度内に設立総会を開催し、理事会も発足、正式にスタートさせる考えだ。

 「ソフトウェアを作る人たちが対象になる。全国津々浦々に声をかけていきたい」(荻原氏)

IT分野の人材不足が解消された試しがない

 今回の新団体の設立について、CSAJ会長の荻原氏は「日本には経済産業省、総務省、国交省などの傘下に200近いIT関連団体がある。さらに新たなものが生まれている。自動車業界は、日本自動車工業会ひとつであり、強い力を持っている。しかし、ソフトウェア産業では、ひとつひとつの団体が小さく、力が弱いために提言しても“何か言っているな”ぐらいに捉えられている。これではいけない」と説明した。

荻原紀男氏
コンピュータソフトウェア協会(CSAJ)会長 荻原紀男氏(豆蔵ホールディングス代表取締役社長)

 「本当は、すべての団体を解散して、ひとつの団体にしようと提案したが、それに関しては強い反発があった。そこで、管轄省庁をまたがった形で個人や企業ではなく、団体として参加することにした。これにより、まとまりができ、政策提言や海外対応が行えるようになる。1年前から準備をして、各省庁の理解を得たところである」(荻原氏)

 荻原氏は新団体の設立背景に絡んで「ひとつの団体にまとまる上で共通のテーマが必要。そこで注目したのが、2020年に向けたサイバーディフェンスリーグ。五輪に向けて政府や企業、団体などがサイバー攻撃を受ける可能性があるが、現在のエンジニアは企業などへの対応で忙しい。五輪そのものに対して、ボランティアで対応できるエンジニアが必要で、今後5年間で4万人のエンジニアを育てなくてはいけない」と人材の育成が急務であることを強調した。

 「新たな団体では共通プラットフォームの上で教育カリキュラムを確立して、中学生、高校生を対象に育成していきたいと考えている。今の日本では、IT教育に対する予算がないに等しい。サイバーディフェンスリーグをテコにして、IT教育予算を確保し、将来のIT立国へとつなげたい」(荻原氏)

長谷川亘氏
全国地域情報産業団体連合会(ANIA)会長 長谷川亘氏(京都府情報産業協会会長)

 ANIA会長の長谷川氏は、「新たな団体を設立することで地方都市の企業を含めた情報流通がよくなること、国との対応を一本化することの合理的なメリットもある。新団体の設立には諸手を挙げて賛成した。また、ウェブデザイン企業と受託系企業といった企業の世代を埋めるような交流の場がない。こうした場も必要だ」と新団体の意義を主張した。

 「過去30年間、IT分野の人材不足が指摘されているが、それが解消された試しがない。情報工学科をはじめとするIT関連学部に在籍し、卒業する学生は毎年7万4000人程度である。これらの学生がすべてIT業界に就職すれば、50万人という人材不足は解消されているはずだが、そうではない」(長谷川氏)

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