DellとEMCは米国時間10月12日、670億ドル規模の歴史的な買収契約を発表した。これはテクノロジ企業の買収としては史上最高額で、EMCはDellの傘下に入り、非公開企業となる。この買収については、数週間にわたりさまざまな憶測が飛び交っていた。この規模と範囲の買収となれば、影響の詳細が明らかになるには今後数週間はかかるだろうが、この記事では顧客が考慮に入れておくべき、現時点で分かるポイントをまとめる。
焦点はVMware
EMCはVMwareの株式の81%を保有しており、VMwareは買収完了後も引き続き公開企業として存続する。とは言え、Constellation Researchのバイスプレジデント兼主席アナリストHolger Mueller氏は、VMwareと同社が抱える世界中の企業のワークロードは、この買収のもっとも重要な部分だと話す。
Dellの目論見は、Dellのサーバやソフトウェア、EMCのストレージ、VMwareの「AirWatch」を始めとする合併後の同社の資産をプライベートおよびパブリックのデータセンターに配備し、そこにこれらのワークロードを取り込むことだ。
「今後、ワークロードの多くがパブリッククラウド上で実行されるようになることは明白であり、新生Dellは、通信事業者やその他のプロバイダが立ち上げるパブリッククラウドの、OEM供給業者以上の存在になる方法を見いだす必要がある」とMueller氏は付け加えた。「VMwareは、オンプレミスで企業がどのようなワークロードを実行しているかを誰よりも熟知している。Dellのマスタープランは、このワークロードを、オンプレミスのデータセンター以外のところにいつ移すかということになるだろう」(Mueller氏)
Pivotalに関する動向
Dellの最高経営責任者(CEO)Michael Dell氏とEMCのCEOであるJoe Tucci氏は、この買収契約に関する12日の電話会議では、ソフトウェアについて多くを語らなかった。しかしソフトウェア、特にエンタープライズアプリケーションの開発と提供は、合併後の同社の主要な成長エンジンになる可能性がある。「適切に進めば、Dellはもっとも人気のあるエンタープライズPaaSであるPivotalの大半を所有することになり、次世代アプリケーションで重要な位置を占めることができる」とMueller氏は述べている。
オープンなビジネスは継続するか
DellはEMC、VMware、Ciscoの間のコンバージドインフラストラクチャベンチャーであるVCEなどのパートナーシップ関係を継続する意向であり、同社の役員は「顧客には幅広い選択肢を提供する」と述べている。また、Michael Dell氏によれば、同社が仮想化プラットフォームにVMwareだけを推すこともしないという。さらに同社の役員は、EMCによるLenovoやHewlett-Packardなどとの強力なパートナーシップも継続していく予定だと述べている。
買収のための資金繰り
Dellは、Silver Lake PartnersおよびMSD Partnersと共同で、EMC買収のために巨額の銀行借り入れを行うことになる。Silver LakeのマネージングパートナーであるEgon Durban氏によれば、計画では、今後18カ月から24カ月の間に借り入れを大幅に圧縮する予定であり、その一部は「コスト面でのシナジー効果」によって実現するという。レイオフも予想されるものの、10月12日の時点では、同社は具体的な言及はしていない。
Dellが負債を減らすための資金を得る別の手段としては、EMCの製品ラインの一部を売却することだろう。もっとも多くの資金を調達できる方法は、もちろんVMwareの売却だ。
結論
戦略的なシナジーに関してはさまざまな感情や期待が持たれているものの、この巨大合併は大きなリスクと不確定性を伴っている。そのこと自体は、この規模の合併であれば避けられない。DellとEMCの顧客は、長期にわたる複雑な統合プロセスの発生と、両社の営業やサポートの体制が大きく変わる可能性があることを予期しておくべきだろう。
パブリッククラウドまたはプライベートクラウドへの移行の初期段階、または中期段階にある顧客にとっては、戦略的プロバイダの有力な選択肢が1つ増えたことになる。
「Dellはこの契約で使途が自由な大きなキャッシュフローを手に入れ、自社の製品ポートフォリオを再構築して、プライベートクラウド市場で戦うチャンスを得ただけでなく、クラウドIaaSやPaaSの分野でAmazonとも戦える規模を獲得した」と、Constellation Researchの創業者Ray Wang氏は述べている。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。