DellがEMCを約670億ドル相当の現金と株式で買収することで合意したと発表した。この買収は、企業向けのテクノロジやハイブリッドデータセンターの分野では、規模が大きければ大きいほどよいという見方を具現化したものと言える。
DellとEMCを組み合わせることで、「株式非公開で運営される、世界最大規模の統合技術企業」が誕生するとプレスリリースには書かれている。
ここで「企業顧客にとって規模が大きいほど好ましいのか」という大きな疑問がわき上がってくる。Hewlett-Packard(HP)やeBayといった他のテクノロジ企業が小回りのきく競合他社に対抗しようとして分社化という道を選択するなか、DellとEMCは超大規模企業として戦っていこうとしている。
EMCの株主には1株あたり24.05ドルの現金と、(EMCが大半の株式を所有する)VMwareを対象とした子会社連動株式が発行される。EMCの株主は、EMC株式1株につきVMwareの子会社連動株式を0.111株受け取る見込みだ。
足し合わせると、EMC株主には1株あたり33.15ドル相当の現金とVMware株式が支払われる予定。VMwareは今後も株式公開企業として独立して運営される。
買収費用は、Dellの創業者で会長兼最高経営責任者(CEO)を務めるMichael Dell氏、MSD Partners、Silver Lake、Temasekの新規の株主資本や、新規株式発行、負債による資金調達、手持ち現金で賄われる。買収は2016年中頃に完了する予定。
Dellの会長兼最高経営責任者(CEO)の職は、引き続きDell氏が務める。また、EMCのCEOであるJoe Tucci氏は買収が完了するまで現職にとどまる。Dellは顧客向けの文書で以下のように述べている。
われわれは、中小企業市場に強いDellと、大規模企業市場に強いEMCの力を結集することで発展を目指していく。合併により、これまで以上に優れたサービスの提供が可能になるとともに、エンドツーエンドのソリューションポートフォリオを横断した、そして顧客セグメントを横断したイノベーションの加速による多大なキャッシュフローの創出が可能になる。実際のところ、合併による相乗効果がもたらす売上高の増加は、相乗効果がもたらすコスト削減規模の3倍になると考えている。この合併はわれわれにとって、そしてあなた方にとって機会と成長、イノベーションそのものであると言える。われわれは自らの責務を果たしつつ、顧客組織の長期的な成功に向けて投資を継続していく用意ができている。
Tucci氏は電話会議で「IT業界は、激震に見舞われるとともに、大きな機会が生み出されるという、新たな時代を迎えようとしている」と述べたうえで、EMCにとってDellとの合併は、そうした時代に向けて自らの立場を強化する最善の道だと述べた。
「われわれは相補的な市場ポートフォリオを手にすることになる」(Tucci氏)