今後についての疑問
EMCとDellの相性は、表面的には極めてよいと言える。営業部門は大部分において相補的であり、製品ラインもうまくかみ合っている。このため、企業の導入に耐えられる完全なスタックが提供されるのは間違いない。唯一足りないパーツとしてネットワーク関連があるものの、VMwareにおけるソフトウェア定義ネットワーク(SDN)に向けた取り組みによって、この状況が変化することも考えられる。
また、EMCのVCEコンバージドインフラのパートナーには依然としてCisco Systemsが含まれている。Ciscoは今後もパートナーとして残り続けるだろう。
Tucci氏は電話会議のなかで、この合併は「歴史的」だと述べた。Tucci氏の見解が適切であるかどうかは、合併後の企業が以下の疑問に対してどのように取り組んでいくのかにかかっている。
- EMCとDellはハイパースケールクラウドのプロバイダーとどのように戦っていくのだろうか?EMCとDellは企業が導入したいと考えるクラウド関連の要素すべてを販売することができる。しかし、企業が自社インフラを構築したいと考えるかどうかは未知数だ。また、EMCとDellはAmazonやGoogle、Microsoftといった競合と戦う必要がある。Credit Suisseの見積もりでは、Amazon Web Services(AWS)が売上高を1ドル増やすたびに、既存のITベンダーの売上高が4ドル減ることになるという。
- 説得力は増すのだろうか?EMCにおける最大の問題は、企業連合というアプローチがややこしく、構成企業が一枚岩のように動けるかどうかが不明だという点にあった。VMwareが独立を貫き、Pivotalが現状通りの操業を継続し、EMCがマサチューセッツ州に拠点を置き続けるのであれば、EMCという企業連合は看板をDellに架け替えただけにしか見えないだろう。
- 製品計画のそりは合うが、営業部門のそりは合うのだろうか?企業顧客はDellとEMCの双方の営業担当者と会計担当者とやり取りすることになるだろう。こういったやり取りがどの程度になるのかが問題だ。幹部らは売上高に対する相乗効果が10億ドルに達し得るとコメントしている。
- VMwareは独立した企業として扱われるのだろうか?VMwareの株式は、合併したDellとEMCの子会社連動株式となるが、そのエコシステムに影響が波及する可能性もある。EMCが手がける分野はサーバではなくストレージであるため、同社がVMwareを所有していたとしてもCiscoやHP、Lenovoといった企業にとって心配の必要はなかった。しかし、Dellは大手のサーバ企業であり、VMwareのパートナーと競合する関係にある。
- この買収は本当に実現するのだろうか?EMCには、Go-Shop条項に基づいて60日の猶予期間が与えられている。つまりEMCは、Dellよりも良い条件を提示する買い手を2カ月かけて探すことができる。Ciscoが買い手として名乗りを上げる可能性もある。これほど規模の大きな買収案件を白紙に戻せる企業の数はそう多くない。しかし、不確定要素の雲が深く垂れ込めている状態だ。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。