サイバー攻撃による被害が多発している。攻撃手法はますます巧妙化しており、決め手となる対策は存在しない。全方位で防御線を張ることは企業にとってコスト面からも困難であり、攻撃者優位の状況に直面している。
攻撃者は企業ネットワークにおいて1点の脆弱性(1台の脆弱なPC)を攻略することで侵入が可能である。その後はゆっくりと企業ネットワーク全体への侵害を進めていく。セキュリティポリシーの緩い企業においては、極論すると全端末台数の侵入口、セキュリティホールが潜在するということも可能だ。
このような状況をふまえたとき、被害を受けることを前提としたインシデントレスポンス体制、組織内CSIRT(Computer Security Incident Response Team)の整備が喫緊の課題となっており、多くの企業でCSIRTの立上げが加速している。しかしながら、実際には名ばかりの、いわゆる「なんちゃってCSIRT」があふれている現状がある。
筆者はこれまでコンサルタントとして、サイバーセキュリティの最前線でさまざまな企業から相談を受けてきた。CSIRTをどのように組織すれば良いか、どこまでやれば良いかなど、迷われている企業が多いことは周知のとおりだ。
本稿では、筆者の経験から、「なんちゃって」CSIRTにならないための「実効性のある」CSIRT実現のポイントを解説する。CSIRT整備を進められている経営者、担当者の方々の一助になれば幸いである。なお、本稿の意見に関する部分は私見であり、所属する法人の公式見解ではないことを予めお断りしておく。
CSIRTを構成するリソースとして、大きく3つ、「プロセス」(Process)「人」(People)「技術」(Technology)に分類できる。CSIRTには決まった形はなく、またビッグバンのように整備することは困難である。組織の状況や習熟度に応じて、これらの3つのリソースをどこまで充実させるかを決めていくアプローチが重要である。
今後、全3回に分けて、この3つのポイントから、実効性のあるCSIRTを作り上げるための課題や施策について、筆者の経験を交えながら解説していく。