ネットワークコンピューティングに特化したテクノロジとビジネスの大規模展示会「Interop」が今年も開催された。これに先立ち、大手町サンケイプラザにおいて6月8日および9日に「Interop カンファレンス」が開催された。
今回は、IoT時代に対応するための「新しいテクノロジー」「新しい市場」について幅広くカバーする32のセッションが行われた。ここでは、6月8日に行われたセッション「CSIRT構築のすすめ」をレポートする。
自組織の特徴に合ったCSIRTを構築することがポイント
セッションは、JPCERTコーディネーションセンター(JPCERT/CC)のエンタープライズサポートグループ部門長である村上晃氏による「CSIRT構築のすすめ」で始まった。村上氏はまず、JPCERT/CCについて「インシデントの解決・再発防止に向けて国内外のCSIRTや関係機関と調整を行う組織」と紹介した。海外から見るとJPCERT/CCは「日本の窓口」であり、海外でも同様に米国のUS-CERTやCERT/CC、中国のCNCERTなど、国の窓口となるCSIRTが存在する。
JPCERT/CCの村上晃氏
村上氏は、JPCERT/CCの主な活動として「脆弱性情報ハンドリング」「情報収集・分析・発信(定点観測「TSUBAME」)」「インシデントハンドリング」を挙げた。
また、企業などにおけるCSIRTは、発生した事象を検知およびその報告を受け、組織におけるインシデントと判断でき、解決に向けた対応および調整ができる機能あるいはチームのことであるとする。特にインシデント発生の抑止や解決のため、外部との技術的な連携ができることが特徴とした。
なお、組織として存在する必要はなく、機能として存在していればいい――つまり、平常時は担当の部署で業務を行い、有事の際にCSIRTの一員として活動する形だ。
また組織内CSIRTの有用性として、経営層直下の部署横断チームであり、組織内のインシデントを包括的に把握できること、組織内でインシデントが発生した際に外部からの窓口として機能すること、他組織のCSIRTとも連携することを挙げた。組織内CSIRTの基本的な役割は、組織において発生したインシデントに対応することだ。
組織内CSIRTの役割の例(調整役として)
その対象は、システム管理者とネットワーク管理者、全社員、顧客、関係組織(子会社や保守管理を外注している会社など)だ。ただし、その役割の範囲は組織により異なる。
理由は、組織の事業内容、規模、部門構成、業務遂行形態、組織や事業に対する脅威およびリスクが異なるためで、脅威やリスクが異なれば発生するインシデントの傾向も異なり、対応するアプローチも変わってくる。また村上氏は、CSIRTの役割はインシデント対応のポイントによって変わると指摘した。
ポイントとして「ユーザーからのインシデント報告」「外部のインシデント対応チームとの連携」「インシデント関連情報の伝達経路の保全」「他組織のCSIRTとの情報共有」の4点を挙げた。
さらに、CSIRTの役割(インシデント対応)の範囲は、経営層やサービス対象から期待されることにより、大きく3つの定義に分けられる。1つは、組織内に「インシデント対応能力をつける」ことで、チームはインシデントに「直接」対応する。
2つ目は、「組織的なインシデント対応能力をつける」ことで、チームは部門によるインシデント対応を「支援」する。3つ目は、「外的要因のインシデント」への対応能力をつけることで、インシデントに対して外部および内部の部門と「調整」して対応する。
CSIRT構築の流れ
組織内CSIRTを構築するための実装と留意点では、キックオフから運用に至るまでの一般的な8つのプロセスを紹介。また、組織内におけるCSIRTの位置づけとして「セキュリティチーム」「分散型CSIRT」「集中型CSIRT」「統合(分散/集中)型CSIRT」「調整役CSIRT」の分類があることを説明し、組織の実情に合わせたCSIRTを選択すべだとしている。
組織内におけるCSIRTの位置づけの分類
さらに運用の勘所として、「経営層から理解を得る」「組織内の現状把握」「組織内CSIRT構築活動のためのチーム結成」「組織内CSIRTの設計と計画」「必要な予算やリソースの獲得」「組織内CSIRT関連規則類の整備」「CSIRT 要員(スタッフ)への教育」「CSIRT の告知と活動開始」を挙げた。
村上氏は「既存機能との組織内連携が鍵」であるとし、さらに事業継続を意識することと訓練により、経営目線のプロアクティブなセキュリティ対策を実現できるとした。